ドル指数はV字型に切り返す、エネルギー要因が後退し米金利見通しが焦点に
週明けのドル指数は日中の下げをすべて取り戻し、小幅高で取引を終えた。原油価格とドルの連動性が弱まる一方、米金利見通しとの正の相関が強まっており、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)が焦点となる。ウォーシュFRB議長がタカ派姿勢を維持すればドル高が進む可能性がある一方、ドル円が165円に接近する局面では、日本当局による為替介入への警戒も強まりやすい。
足元の為替市場動向
ドル指数は下げを解消、米金利とFRB政策を巡る発言が焦点
月曜日のドル指数は日中に下落した後、V字型に切り返して下げをすべて解消した。終値は前日比0.05%高の101.52だった。
米国債市場では、指標となる10年債利回りが4.652%、FRBの政策金利見通しに敏感な2年債利回りは4.331%となった。
トランプ米大統領はウォーシュ氏について「正しいことをすると信じている」「ウォーシュ氏が何を望んでいるか分かっている」と述べた一方、米国の金利は世界で最も低くあるべきだと主張した。
米国、イスラエルとイランを巡る動向
トランプ氏は、イランとの新たな合意に向けた交渉を続けるだけの忍耐はあり、協議を進めていると説明した。ただし、交渉に残された時間は限られており、決裂すれば軍事行動を再開すると述べた。イランへの攻撃を停止したのは、仲介国から交渉にもう一度機会を与えるよう要請されたためであり、イランには合意する意思があるとの見方も示した。
一方、イランは、ホルムズ海峡を巡るオマーンとの協議は米国と無関係であり、米国との交渉再開も求めていないと主張した。フーシ派はサウジアラビアの原油輸送インフラを攻撃したと表明した。サウジアラビアは、イラク領内から発射された無人機を迎撃し、破壊したと発表した。
本日の注目材料
市場では引き続き、米国、イスラエルとイランを巡る戦況が注視される。時刻は未定だが、イスラエルのネタニヤフ首相とトランプ米大統領の会談が予定されているほか、日本時間23時には米国の7月コンファレンス・ボード消費者信頼感指数が発表される。
海外市場の見方を踏まえた為替相場分析
本章では、海外金融機関や市場関係者の見解を参考にしながら、為替相場に対する主な見方を整理する。各見解は、公開情報をもとにRYOEXリサーチチームが要約・再構成したものであり、特定の機関や人物がRYOEXの見解を支持・推奨するものではない。
ゴールドマン・サックス|金利・収益環境がドルを左右、ユーロと円には下押し要因
ゴールドマン・サックスは、今回のエネルギー要因に対するドルの反応が比較的穏やかな理由として、ドル相場が以前より高い水準にあったことに加え、現在の安全資産需要が3月を下回っていることを挙げた。
原油価格が高値圏を維持した場合でも、市場がFRBによる来週の利上げの可能性を相応に見込むなか、政策決定によって今後の利上げ幅に対する累積的な織り込みが大きく変わることはなく、ドルの反応も限定的になると予想している。
より中期的には、同行のエコノミストはFRBが年末まで政策金利を据え置くと予測している。これは他のG10通貨に対してドルを緩やかに下押しするものの、影響は限定的だとみている。今後数カ月のドルの方向については、キャリー収益や交易条件、それらに関連する相対的な収益見通しが主な決定要因になるとの見方である。
ユーロについては、広範なドル相場の裏返しとして動いていると指摘した。ここ数カ月のユーロとドルの相関は、他のG10通貨の対ドル相場と比べても著しく強い。ユーロ圏独自の経済指標や政策を材料とした値動きが限られていることが、背景の一つだという。
ドイツの財政政策は着実に実行されているものの、ユーロ圏全体の成長に対するプラス効果は、世界的なエネルギーショックによって見えにくくなっている。欧州中央銀行(ECB)の政策方針は事前に十分示される傾向があり、今週の政策金利据え置きや9月の利上げも市場で広く予想され、織り込まれている。
ECBの利上げを巡る市場の織り込みは、9月に最後の追加利上げを行うという同行エコノミストの基本予測を明確に上回っている。ただし、同様の傾向はほぼすべてのG10市場でみられるため、ECBを起点とした金利差の変化がユーロを実質的に押し上げるには、なお高いハードルがあるとした。
ユーロには、欧州の天然ガス価格が今回のエネルギーショックに対して今年3~4月より強く反応したことに伴う交易条件の悪化に加え、高金利通貨が低金利通貨を上回る相場環境も不利に働いている。これらの要因は今後数カ月もユーロドルを圧迫し、ユーロを調達通貨とするキャリートレードを支えるとみている。
円については、FRBが利上げせず、市場のリスク選好も維持されるとの想定から、ドル円の上昇が続くと予想した。日本政府が8月初めまでに消費税率の引き下げを進める場合、国内の財政リスクが日本国債と円への下押し圧力となる可能性もある。これは、日本政府が短期的に、より拡張的で制約の少ない財政運営へ移行する動きと整合するという。
一方、投資家がキャリートレードの巻き戻しリスクを警戒することには合理性があるとした。現在のマクロ環境は過去ほど円高に有利ではないものの、為替介入によって投機的な持ち高を大きく減らすことは可能である。ただし、円買い介入の効果は比較的短期間にとどまりやすい。
これに対し、日本への資金還流を促す政策は、より信頼性が高く、持続的な手段になり得る。特に米国の経済見通しが弱まる場合、円の著しい割安状態を段階的に修正する可能性があるという。
日本政府は、同行が従来想定していたよりも、こうした政策の導入に近づいているようにみえる。当初は、より有利な為替水準を確保したいとの意向もあり、緩やかで目立たない形で進められる可能性がある。ただし、資金フローに資産配分変更の動きが表れ始めれば、長期的な持ち高の解消が始まった可能性を示す。こうした調整は、2024年8月の変動局面ではほとんどみられなかった。
短期的には円への下押し圧力が残るものの、円安が加速し、無秩序に進めば、為替介入の可能性は一段と高まる。その場合、日本政府が円相場の長期的な方向性を変え得る、より信頼性の高い対応に動く可能性もあるとみている。
デービッド・スカット氏|米金利の利上げ方向への織り込み直しがドル高を促す可能性
市場アナリストのデービッド・スカット氏は、今週の利上げリスクが市場で過小評価されている場合、米金利市場で大きな調整が起きる可能性があると指摘した。
ここ数週間、米金利見通し、とりわけ米国債利回り曲線の短期部分とドル指数の間には強い正の相関がみられる。相関の強さは時間とともに変化するものの、FRBの政策金利に対する市場の織り込みが利上げ方向に傾けば、ドルが上昇しやすいという基本的な関係は変わっていない。
6月のFOMC後、市場では利上げ方向への明確な見直しが進んだ。現在の金利スワップ市場は、来年半ばまでに25ベーシスポイントの利上げが累計で2回を超えると見込んでおり、9月の利上げは完全に織り込まれている。
FRBが今週、実際に利上げした場合、市場の調整は25ベーシスポイントの1回分にとどまらず、FRBの政策反応や将来の政策金利経路そのものが見直される可能性がある。
市場は、FRBが四半期経済見通しを公表する会合でのみ政策を変更するとの見方を改め、FOMCが必要と判断すればいつでも金融引き締めに動く可能性があると考え始めるかもしれない。その場合、米国債利回り曲線の短期部分が大きく見直され、ドルが再び上昇する可能性がある。
イランでの戦争初期には原油価格がドル相場の主要因だったが、その影響はその後弱まり、米金利見通しがドルの方向を左右する中心的な要因になったと指摘している。
キャピタル・エコノミクスのニール・シアリング氏|米欧英の政策経路は来年に分岐も
キャピタル・エコノミクスのニール・シアリング氏は、市場が2027年半ばまでに、FRB、イングランド銀行、ECBによる50ベーシスポイント強の利上げを織り込んでいる一方、来年には政策経路が分かれる可能性があると指摘した。
その前提となるのは、イランでの戦争が終結してエネルギー価格が下落し、各中央銀行の政策が再び国内の経済基礎条件に左右される状況である。
この場合、英国とユーロ圏では国内の物価上昇圧力が弱い一方、米国の財政政策は引き続き緩和的だという。シアリング氏は、ECBとイングランド銀行の金融引き締めを巡る市場予想は正当化が難しくなっている一方、FRBは近く引き締めを再開する可能性があり、大西洋を挟んだ政策経路の違いが鮮明になるとみている。
ジェームズ・スタンレー氏|FOMCの姿勢がユーロドルとドル円の焦点
アナリストのジェームズ・スタンレー氏は、ドルが明確な方向性を示すには、ユーロの動きが重要だと指摘した。ドル指数(DXY)に占めるユーロの比率は57.6%で、2番目に大きい円の13.6%を大幅に上回るためである。
ただし、資金フローがこの構図を崩す場合もある。2024年夏には、欧州の成長鈍化とFRBの利下げに備える動きのなかで、大規模なキャリートレードの巻き戻しが発生した。ドルが下落し、ユーロドルは反発して1.1200を維持した。同様の動きが再現されるかどうかは、必要な条件が整うかに左右されるという。
今週の焦点はFOMCである。ウォーシュ氏はFRB議長に就任して以来、タカ派的な姿勢を示している。これは、トランプ氏が指名時に「利下げへの意欲が試金石になる」とした姿勢とは異なる。
スタンレー氏は、ウォーシュ氏が就任した時点でインフレ指標が高かったため、少なくとも発言上は利上げの可能性を排除できない立場だったとみている。そうしなければ、市場がドル安の継続を見込むためである。インフレ率が高い局面での利下げは、インフレ期待を押し上げ、長期国債利回りと住宅ローン金利の上昇につながり得る。利下げによって利回り曲線全体が必ず低下するわけではなく、長期金利が上昇する場合もあるとした。
焦点は、株式市場に弱さが見え始めるなかでも、ウォーシュ氏が水曜日にタカ派姿勢を維持するかどうかである。タカ派姿勢が続けば、株安に加え、ドル高が翌日の日本銀行の政策決定に圧力をかける可能性がある。ドル円が165円に接近すれば、2024年7月と同様に為替介入への警戒が高まる可能性もある。
市場では、根強いインフレへの対応としてFRBが利上げするとの見方が形成されつつある。これは6月17日のFOMC後に市場を主導し、ユーロドルが下方向に値幅を広げる要因となった見方でもある。
FRBがタカ派姿勢を維持すれば、ユーロドルが直近安値の1.1325を試す展開も十分に想定される。一方、株式市場への圧力を受けてウォーシュ氏が姿勢を軟化させれば、ドル上昇の前提が揺らぐ可能性がある。方向を見極める材料は、水曜日のFOMC声明とウォーシュ氏の記者会見となる。
為替市場の注目チャート
本章では、足元の為替相場を読み解くうえで参考となるチャートを取り上げ、金融政策や金利動向、市場心理の変化を整理する。掲載するチャートやデータは第三者機関の情報をもとにしたもので、RYOEXの見解や将来の価格動向を示すものではない。相場急変の可能性も踏まえ、十分なリスク管理を心がけたい。
米国の6月耐久財受注は前月比0.3%
米国の6月耐久財受注は前月比0.3%にとどまり、市場予想を大きく下回った。
米国の6月コア資本財受注は前月比0.9%
航空機を除くコア資本財受注は前月比0.9%となり、市場予想を上回った。出荷は前月比1.9%増と、2021年末以来の最大の伸びとなった。AI関連投資と国防支出に支えられ、企業投資が引き続き底堅いことを示した。一方、トランプ政権の関税政策と中東情勢は、今後の下押し要因とされる。
年末までの50ベーシスポイント利上げ確率は38.3%
トランプ氏は月曜日、米国の金利は世界で最も低くあるべきだと述べ、FRBに公然と圧力をかけた。ただし、原油価格、とりわけガソリン価格が長期にわたって高値圏を維持するなか、金利市場はこの発言に反応していない。市場が見込む年末までの50ベーシスポイント利上げの確率は38.3%で、この見通しはドル指数と米国債利回りを引き続き支えるとみられている。
まとめ
ドル指数は週明けに日中の下げを取り戻し、米金利見通しとの連動性が改めて焦点となった。FOMCがタカ派姿勢を維持すればドル高が進む可能性がある一方、姿勢が軟化すれば上昇の前提が揺らぐ。ユーロは交易条件と金利差の両面から圧力を受けやすく、円にも短期的な下押し要因が残る。ただし、ドル円の上昇が加速し、無秩序に進めば、日本当局による為替介入への警戒が強まる。FOMC声明とウォーシュ氏の記者会見、中東情勢、米国の消費者信頼感指数が次の焦点となる。
この記事が役に立ったら、ぜひシェアしてください。