ドル指数は101.11に小幅低下、米・イラン情勢がドルを下支え ドル円は163円台に上昇
水曜日の外国為替市場では、米・イラン情勢を見極めようとする動きが続き、ドル指数は101付近でもみ合った後、小幅に低下した。一方、安全資産としてのドル需要や米金利の動向がドルを支え、ドル円は1986年7月以来初めて163円台に上昇した。円安を受けて日本当局がけん制を強めるなか、本日は欧州中央銀行(ECB)の政策判断やラガルド総裁の記者会見、米新規失業保険申請件数などが焦点となる。
足元の為替市場動向
ドル指数は101付近でもみ合い、米・イラン情勢がドルを下支え
水曜日のドル指数は101付近で推移し、終値は前日比0.08%安の101.11となった。米10年債利回りは4.668%、FRBの政策金利に敏感な米2年債利回りは4.302%となった。
市場では、米・イラン情勢を巡る不透明感が続いている。イラン当局者は、テヘランが交渉を求めたとするトランプ米大統領の発言について「全く根拠がない」と主張した。一方、ルビオ米国務長官は、米国はイランとの外交的解決に前向きだが、イラン側に誠意がないとの見方を示した。
トランプ氏は、イランがホルムズ海峡を通航する船舶を攻撃した場合、米国はイランの橋や発電所を破壊すると述べた。これに対し、イラン軍は、米国が脅しを実行すれば湾岸地域の原油輸送を全面的に遮断し、域内の石油、天然ガス、電力、経済インフラを攻撃すると主張した。
イスラエルメディアは、米国が今後数日以内に対イラン攻撃を強化する計画をイスラエル側に伝えたと報じた。英国はイランに駐在する外交要員を撤収した。
トランプ氏はこのほか、米連邦政府が9月に閉鎖されるとの見通しを示した。後発医薬品については、2年間は関税をゼロとし、その後は100%、200%の関税を課す方針を表明した。
ドル円は163円台、政府は円安を改めてけん制
ドル円は1986年7月以来初めて163円台に乗せた。片山晃月財務相は、必要であれば日本は為替市場で断固たる措置を取ると表明した。木原官房長官も、政府は「いつでも適切な対応を取る用意がある」と述べた。
市場では、日本当局が為替介入に踏み切る可能性が意識されている。関係者によると、円安がインフレリスクを高めるなか、日銀は利上げペースの加速を選択肢から排除していない。
日本の翌日物金利は現在1%で、6月時点のゼロ金利を上回り、31年ぶりの高水準となっている。ロイターが今回改めて報じた6月の調査では、日銀が年末までに政策金利を1.25%へ追加で引き上げる可能性が示されていた。ただ、日本の金利と国債利回りは、なお他の主要7カ国(G7)諸国を大きく下回っている。
エネルギー価格の上昇がインフレをさらに押し上げれば、日銀が想定より早く追加利上げに動く可能性がある。ただし、日米金利差を縮小する効果は限られ、実際の影響は米国債利回りがどこまで上昇するかにも左右される。
ECB理事会とラガルド総裁会見が焦点
ユーロ・ドルは、エネルギー価格が反発するなかでも相対的に底堅く推移している。市場では、原油高を受けてECBがFRBより積極的な金融引き締めで対応するとの見方が、ユーロを支える主な材料となっている。
本日は10時30分(日本時間)にオーストラリアの6月季節調整済み失業率、19時に英国の7月CBI製造業受注指数が発表される。21時15分にはECBが政策金利を発表し、21時30分には米国の7月18日までの1週間の新規失業保険申請件数、21時45分にはラガルドECB総裁の記者会見が予定されている。23時にはユーロ圏の7月消費者信頼感指数速報値が発表される。
海外市場の見方を踏まえた為替相場分析
本章では、海外金融機関や市場関係者の見解を参考にしながら、為替相場に対する主な見方を整理する。各見解は、公開情報をもとにRYOEXリサーチチームが要約・再構成したものであり、特定の機関や人物がRYOEXの見解を支持・推奨するものではない。
ラボバンク|日銀の利上げ姿勢と財政への懸念
ラボバンクによると、植田和男日銀総裁は、日本企業による積極的な賃金設定の動きと、それによって基調的な消費者物価指数(CPI)の上昇率が持続的に2%の目標へ近づく可能性について、楽観的な見方を維持している。
植田総裁は昨年のクリスマス当日の講演で、経済活動と物価の改善に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく考えを示した。先月の講演では、原油高が日本経済を一時的に下押しする可能性に言及する一方、政府による戦略石油備蓄の活用がもたらす緩和効果や、人工知能(AI)関連需要による成長の下支えも指摘した。
こうした要因を背景に、エネルギー価格の上昇や米国の関税を巡る不透明感があるものの、日本の輸出と生産は総じて横ばいを保っているという。
円を圧迫している要因は金利差だけではない。日銀は2024年以降、国債買い入れ計画を継続的に縮小し、バランスシートの縮小を容認してきた。これに伴い、財政を巡る市場の懸念や、首相が拡張的な財政政策を志向するとの警戒感が強まっている。ラボバンクは、予算が日本国債(JGB)市場に及ぼす影響について、政府に一段と明確な説明が求められるとの見方を示した。
ING|ユーロを支えるECBの引き締め観測は長続きしにくい可能性
INGは、エネルギー価格が反発するなかでも、ユーロ・ドルは相対的に底堅く推移していると指摘した。原油高を受け、ECBがFRBより積極的な金融引き締めで対応するとの見方が金利差に反映され、ユーロを支えている可能性がある。
ただし、ECB理事会やラガルド総裁の記者会見でどのようなメッセージが示されても、市場がECBの政策金利上昇をさらに織り込む余地は限られるとみている。このため、ECBの政策見通しによるユーロの下支え効果は、早期に薄れる可能性がある。
一方、ドルは底堅く推移している。安全資産を求める動きが、FRBの目先の金融政策を巡る不透明感を相殺しているためである。前週発表された米インフレ指標は、7月利上げへの警戒を和らげ、ドルの反発を抑えた。ただ、米・イラン情勢の緊張と原油価格の上昇が、安全資産としてのドル需要を押し上げている。
ドイツ銀行|日本の財政・産業政策転換で円相場の変動率上昇も
ドイツ銀行は、日本が「明治維新」にも似た財政・産業政策の転換点に近づいている可能性を指摘した。再工業化と防衛力強化に向け、投資主導型の成長を目指す動きである。
日本はすでに公的債務が大きいため、財政の持続可能性を維持しながら歳出余地を広げる必要がある。具体的には、名目GDP成長率を資金調達コストより高く保つことで財政赤字の余地を確保するとともに、国内の余剰貯蓄を国内投資に振り向け、利回りの上昇圧力を抑える必要があるという。
日本の家計が保有する約15兆ドルの貯蓄のうち、約半分は現金・預金で保有されている。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用する1兆8,000億ドルの資産も、約半分が海外に配分されている。防衛・産業関連の需要が国内に回帰するなか、資金を国内に還流させる動きがすでに表れているとした。
ここ数カ月、政策当局は円相場の安定を重視してきた。ただし、財政余力の確保が最優先課題となれば、政策の重点が為替介入から国債利回りの管理へ移る可能性がある。
ドル円への影響は、具体的な政策手段によって異なる。GPIFが海外資産から国内資産へ資金を振り向けるよう促されれば、円を強く支える要因となる。反対に、日銀が国債買い入れを拡大して利回りを抑える場合は、円の下押し要因になるという。利回り変動の抑制を優先すれば、調整圧力が外国為替市場へ移り、円相場の変動率が大きく上昇する可能性がある。
また、ドイツ銀行は、日本当局による為替介入について、介入資金を費やすだけに終わる可能性があると指摘し、ドル円が165円まで上昇することは十分にあり得るとの見方を示した。日銀には独立性があり、日米金利差を実質的に縮小するには、政府が金利政策に関与する必要があることを理由の一つとして挙げた。
為替市場の注目チャート
本章では、足元の為替相場を読み解くうえで参考となるチャートを取り上げ、金融政策や金利動向、市場心理の変化を整理する。掲載するチャートやデータは第三者機関の情報をもとにしたもので、RYOEXの見解や将来の価格動向を示すものではない。相場急変の可能性も踏まえ、十分なリスク管理を心がけたい。
7月のFRB利上げ確率は33.1%に上昇
ウォーシュ氏が初めて米連邦公開市場委員会(FOMC)を主宰して以降、市場の利上げ織り込みは大きく変動している。次週のFRBによる政策決定を前に、6月のFOMCとウォーシュ氏のタカ派的な発言を受けて利上げ観測が強まった後、6月のCPIと生産者物価指数(PPI)が市場予想を下回り、7月と9月の利上げ確率は低下した。
その後、米・イラン情勢の緊張が強まり、原油価格と輸送コストに再び上昇リスクが生じたことで、市場は将来のインフレ再加速を織り込み始めた。現在の利上げ確率は7月が33.1%、9月が56.4%となっている。年内最後の会合までに累計2回の利上げが実施される確率は38.1%に達した。
金利市場の織り込みと米インフレ指標に乖離
米国のインフレ指標サプライズ指数は0.084付近まで低下しており、最近発表されたインフレ指標が市場予想を下回ったことを示している。一方、経済成長指標のサプライズ指数は0.22前後を維持している。米国経済は急速に失速していないものの、需要の明確な過熱を示す材料も見当たらない。
足元の実体データが示しているのは「コアインフレの鈍化と経済の底堅さ」であり、賃金や消費、信用需要が再び過熱している状況ではない。
利上げの織り込みは経済のファンダメンタルズを上回る可能性
実際のインフレ圧力が和らぐ一方、金利市場では、地政学的緊張や原油価格、サプライチェーンのリスクを受けて利上げ予想が再び強まっている。
今後のインフレが主にエネルギー供給の途絶や輸送コストの上昇によって生じる場合、FRBが利上げしても原油供給を増やすことはできず、海上輸送の正常化や地政学的な対立の解消にもつながらない。金融引き締めは、住宅、信用、企業投資、個人消費を抑えることで、国内需要を弱める方向に作用する。
これまでの利上げの影響も、不動産市場や借り換えコスト、信用市場を通じて遅れて表れている。外部からの供給ショックに対応するためFRBが利上げを続けた場合、「原油価格が高止まりする一方、民間需要と雇用がさらに弱まる」状況に陥る可能性がある。
市場の利上げ織り込みは、現在の経済のファンダメンタルズが正当化する水準を上回っている可能性がある。コアインフレや賃金、信用需要が再び加速しない限り、エネルギー価格の上昇だけを理由に金融引き締めを進めれば、過度な引き締めや景気後退のリスクが高まりやすい。
Google親会社の設備投資額は約576億ドル、通期見通しの上限を2,050億ドルへ引き上げ
Google親会社の直近1期間における設備投資額は約576億ドルに達した。同社は本会計年度の設備投資見通しを1,800億~1,900億ドルから1,950億~2,050億ドルへ引き上げ、2027会計年度も「大幅に増加する」との見通しを示した。データセンター、サーバー、半導体、ネットワーク、電力インフラへの投資を一段と拡大する方針である。
背景には、AI向けコンピューティング能力への需要がある。Googleは自社のAIインフラを拡張するだけでなく、7~9月期に外部事業者が提供するコンピューティング能力の利用を増やす計画である。社内の供給能力だけでは、Geminiやクラウドコンピューティング、AI推論向けの需要を短期的に満たせないことを示している。
AI需要の強さが確認される一方、外部事業者が提供するコンピューティング能力はコストが高く、利益率を圧迫する可能性がある。設備投資計画の引き上げを受け、市場では投資負担の拡大やキャッシュフローへの圧力、収益化時期の後ずれが意識され、Alphabet株は時間外取引で再び下落した。
AI関連の設備投資拡大は、総じてドルにとってプラスの材料とみられる。米大手テクノロジー企業による投資の継続は、米国経済の相対的な成長力を支え、米国株やドル建て資産、米国のテクノロジー関連産業への資金配分を促す可能性がある。AI投資によって設備や電力、資金調達への需要が増えれば、米国債利回りを支え、ドルの底堅さにつながる可能性もある。
まとめ
ドル指数は101.11に小幅低下したものの、米・イラン情勢の緊張を背景とする安全資産需要がドルを支えている。ドル円は163円台に上昇し、日本当局による円安けん制や日銀の利上げペースを巡る観測が強まった。一方、米金利市場では、エネルギー供給や輸送コストへの懸念から利上げの織り込みが進んでいるが、足元のインフレ指標との乖離もみられる。本日は、ECBの政策判断とラガルド総裁の発言に加え、米新規失業保険申請件数、米・イラン情勢、日本当局の円安対応が焦点となる。
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