円、対ドルで1986年以来の安値 163円突破で為替介入への警戒強まる

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円は対ドルで163円台まで下落し、1986年12月以来の安値を付けた。米金利の上昇と逃避先としてのドル需要に加え、中東情勢を背景とした原油高が日本の輸入コストを押し上げるとの見方が、円の重荷となっている。米・イラン間では軍事的緊張が続く一方、外交的な仲介も進められている。原油輸送を巡るリスクはホルムズ海峡から紅海や黒海にも広がっており、為替市場では日本当局による介入への警戒も強まっている。

足元の為替市場動向

ドル指数は101台、米金利上昇がドルを下支え

火曜日の外国為替市場では、米・イラン間の対立が続くなか、ドル指数が米国市場の取引開始前から上昇し、101台に乗せた。終値は前日比0.24%高の101.19だった。

米国債市場では、指標となる10年債利回りが4.629%、FRBの政策金利見通しを反映しやすい2年債利回りが4.278%となった。金利市場では、FRBがタカ派的な政策姿勢を維持するとの見方が残っている。政策金利が高い水準にとどまるとの想定が、ドルを支える材料となっている。

ドル円は163円突破、日米金利差と原油高が円の重荷

ドル円は163円台に上昇し、1986年12月以来の高値を付けた。円は対ドルで約40年ぶりの安値となった。

背景には、ドル高や米国債利回りの上昇、日米金利差がある。日銀は政策金利を1%まで引き上げており、1995年以来の高水準となっている。一方、市場では、大幅な追加利上げが日本の経済成長を抑える可能性が意識されており、日銀の追加引き締め余地に対する慎重な見方が残っている。

中東情勢を背景とした原油高も円の重荷である。中東からのエネルギー輸入への依存度が高い日本では、原油価格の上昇が輸入コストを押し上げ、交易条件を悪化させる。国内物価を押し上げたとしても、それが直ちに円高要因になるとは限らない。

また、地政学的な不確実性は逃避先としてのドル需要を強める一方、円に対してはエネルギー輸入コストの上昇を通じて下押し圧力となっている。日本政府による過去の為替介入は、効果が短期間にとどまることが多かった。ただ、ドル円が163円を上回ったことで、当局のけん制発言や実弾介入に対する市場の警戒は強まっている。

原油輸送リスク、紅海・黒海にも拡大

トランプ米大統領は、イランが会談を望んでいるものの、米国側に関心はないと述べた。また、核施設が存在するとされるイランのシーサーン地域を強く攻撃すると表明し、フーシ派が紅海を封鎖した場合には米国が「行動する」とした。

イラン軍はバーレーンの米空軍基地を攻撃したとし、米国がイランの核施設を攻撃すれば、中東地域にある米国と同盟国の権益がすべて標的になると主張した。一方、パキスタン首相はイラン内相と会談し、引き続き仲介役を担う考えを示した。イラン当局者は火曜日、パキスタンで仲介者と会談したとされる。イスラエルのメディアは、イラン側が10日間の停戦案を提示したと報じた。

原油輸送を巡るリスクは、ホルムズ海峡にとどまらない。データによると、サウジアラビア産原油を積んだタンカー2隻が紅海で進路を変更し、スエズ運河へ向かった。黒海方面でもタンカーや港湾施設への攻撃を受け、カザフスタンが黒海向けの石油輸送を停止するほか、カスピ海パイプライン・コンソーシアムも一時的に積み込みを停止したとされる。

英物価統計と米原油在庫に注目

英国では日本時間15時に、6月の消費者物価指数(CPI)と6月の小売物価指数(前月比)が発表される。

米国では23時30分に、7月17日までの週のEIA原油在庫、オクラホマ州クッシングの原油在庫、戦略石油備蓄が公表される。中東情勢を受けて原油輸送への懸念が広がるなか、在庫動向が注目される。

海外市場の見方を踏まえた為替相場分析

本章では、海外金融機関や市場関係者の見解を参考にしながら、為替相場に対する主な見方を整理する。各見解は、公開情報をもとにRYOEXリサーチチームが要約・再構成したものであり、特定の機関や人物がRYOEXの見解を支持・推奨するものではない。

モルガン・スタンレー|ハイテク株調整で米国債の需給改善を予想

モルガン・スタンレーは、ナスダック100指数とフィラデルフィア半導体株指数が3月末の安値から反発した背景として、人工知能(AI)関連の設備投資への期待と労働市場の底堅さを挙げている。一方で、市場の楽観姿勢は行き過ぎているとみている。両指数は6月中旬の高値から、それぞれ7%、20%下落した。

デリバティブ市場が織り込むFRBの政策金利見通しは、エコノミストの予想より高い。同行は、力強い経済成長とインフレ再加速に伴う利上げリスクも十分に織り込まれていないと指摘し、市場の見方が修正局面を迎えているとした。

米国債相場は、エネルギー価格の上昇に伴うインフレ圧力や、投資適格社債の発行増加によって下押しされている。今年上半期には記録的な規模のデュレーション供給を吸収し、通常は発行が減る6月も供給が落ち込まなかった。

ただし、ハイテク株の調整が深まれば、企業の社債発行意欲が後退する可能性がある。ナスダック指数が調整局面に近づき、半導体株が弱含むなか、同行は7~9月期の社債供給が減少し、米国債市場の需給が改善する可能性があるとみている。このため、ホルムズ海峡を巡る不確実性が残る状況でも、米国債相場が反発する余地があるとの見方を示した。

Money Metals Exchangeのマイク・マハリー氏|長期金利を左右する財政・需給要因

Money Metals Exchangeのマイク・マハリー氏は、過去20年間に長期金利を主に動かしてきた金融政策見通しの影響力が弱まりつつあるとみている。FRBが2024年9月に利下げを開始して以降も、米10年債利回りは3.65%から4.79%へ上昇しており、利下げは長期金利の低下につながらなかった。

ニューヨーク連銀のモデルでは、タームプレミアムが再びプラスに転じ、2025年1月には一時0.8%を超えた。Massif Capitalの調査は、タームプレミアムの上昇が同期間における長期金利上昇の半分以上を説明するとしている。

マハリー氏は、金融政策見通しに代わり、地政学リスクと財政リスクが金利形成において重要になっていると指摘した。価格変動への感応度が低い公的部門に代わり、収益性を重視する民間投資家の影響が強まっているという。中国の米国債保有額は2008年以来の低水準まで減少し、FRBも量的引き締めを通じて保有額を減らしている。そのため、国債供給を引き受ける民間投資家は、より高い利回りを求めているとした。

グラントによる歴史的な見方も引き合いに出し、2021年以降の長期金利上昇は短期的な変動ではなく、長期的な債券弱気相場の初期段階である可能性を示した。政策金利がゼロ近辺だった時期には市場が財政赤字を許容できたが、金利が4%の環境では、その余地が狭まっているという。長期金利を巡る焦点は、「FRBが次に何をするか」から「誰が国債を引き受けるか」へ移っているとの見方である。

ゴールドマン・サックス|ウォーシュ氏の下で想定されるFRBの情報発信見直し

ゴールドマン・サックスは、ウォーシュ氏がFRB議長として情報発信の方法を見直すうえで、大きな権限を持つとみている。同氏は会合後の記者会見で開示する情報量をすでに減らしている。FOMCが納阮氏の提案を採用し、経済見通し(SEP)の予測中央値を公表しなくなれば、ウォーシュ氏はフォワードガイダンスから距離を置く重要な一歩と捉える可能性がある。

一方、他のFRB当局者は、投資家が独自に中央値を算出するため、実際の影響は小さいと考える可能性がある。経済見通しを議論する以上、明確な政策上の約束を伴わない緩やかなフォワードガイダンスであっても、完全に排除することは難しいとの見方も想定される。情報発信の枠組みをさらに大きく変更する場合は、議論を呼ぶ可能性が高い。

FRBが主要な政策手段として量的緩和よりもフェデラルファンド金利を重視し、量的緩和を開始する条件が厳しいと明示した場合、ウォーシュ氏は重要な変更と位置付ける可能性がある。ただし、他の当局者は現行方針の再確認にすぎないと受け止める可能性がある。

また、FRBが短期国債を中心とする保有構成へ移行すれば、ウォーシュ氏は、FRBが財政政策の領域から距離を置く動きだと説明する可能性がある。同氏は、現在の資産保有構成が政府への補助に相当し、FRBの政治化リスクを高めかねないと考えている。もっとも、他の当局者は、財務省がFRBのバランスシート戦略に適応するとみて、実質的な影響は限定的と判断する可能性がある。

AI、生産性、インフレについては、生産性の上昇を伴う力強いGDP成長であれば、FOMCは成長率の高さだけを理由に利上げすべきではないと、ウォーシュ氏が主張する可能性がある。ただし、将来的な生産性向上を理由に、現時点でよりハト派的な政策を採用すべきだと踏み込めば、幅広い支持を得るのは難しいとの見方を示した。

市場の見方|米・イラン対立の長期化で原油・金利・ドルに上昇圧力

市場では、現在の攻撃と報復の規模では、イラン政府の姿勢を変えるには不十分との見方がある。一方、トランプ大統領は、地上部隊の派遣を伴う全面戦争への発展を懸念しているとされる。

仲介国が交渉再開を実現しても、その実効性は過去の停戦協議や覚書を上回らない可能性があるとの見方も示されている。交渉再開の報道を受け、債券利回りや原油価格が一時的に低下する場面も想定されるものの、市場では対立が長期化するとの見方が形成されつつあるという。

このシナリオでは、原油価格への上昇圧力が続き、製油所や在庫、石油関連製品にも影響が及ぶ。供給網には柔軟性と適応力があるものの、影響を受ける地域と産業の範囲が広いため、原油価格が70ドル近辺へ戻るまでには長い時間を要する可能性があるとした。

原油高が続けば、米国で最近みられた一時的なインフレ鈍化の意味は薄れ、各国・地域の物価が上昇する可能性がある。ECBとFRBがインフレ抑制を重視するなら、金利も上昇するとの見方である。長期的には米国債利回りとドルが上昇し、ユーロ、ポンド、多くの新興国通貨には下押し圧力がかかるとみている。また、株式市場は国債利回りだけでなく、原油価格の動きにも反応するようになっていると指摘した。

為替市場の注目チャート

本章では、足元の為替相場を読み解くうえで参考となるチャートを取り上げ、金融政策や金利動向、市場心理の変化を整理する。掲載するチャートやデータは第三者機関の情報をもとにしたもので、RYOEXの見解や将来の価格動向を示すものではない。相場急変の可能性も踏まえ、十分なリスク管理を心がけたい。

米ADP週間雇用者数、7月4日までの週は約1万6,500人増

7月4日までの週の米ADP雇用者数は約1万6,500人増となり、前週の1万9,250人増を下回った。4月初めには増加幅が5万人を超えていた。

翌週のFRBの政策決定を前に重要な経済指標が少ないなか、雇用情勢を判断するための高頻度指標の一つとして注目される。ただし、ADP週間データは変動が大きく、1週間の増加幅が縮小しただけで雇用市場の急速な悪化を確認することはできない。民間部門の雇用は増加しているものの、採用の勢いが弱まっている可能性を示す内容である。

7月FOMC、金利据え置き確率は74.9%

金利市場は、FRBが7月29日に政策金利を3.50~3.75%で据え置く確率を74.9%、25ベーシスポイント引き上げる確率を25.1%とみている。

9月までに少なくとも1回の利上げが実施される確率は70%を超え、年末の確率分布も4.00~4.50%の方向へ移っている。市場では、金融緩和への転換ではなく、利上げ時期が後ずれし、政策金利がより高い水準に長くとどまるシナリオが織り込まれている。

ドル円は163円台、1986年12月以来の高値

ドル円は163円台に上昇し、1986年12月以来の高値を付けた。米金利の上昇と日米の政策金利見通しの違いに加え、中東情勢に伴う原油高が円を圧迫している。

米・イラン情勢を巡っては、軍事的な緊張が強まる一方、パキスタンによる仲介や10日間の停戦案も伝わるなど、外交的な動きも並行している。ただし、イランによる米軍や同盟国の関連施設への攻撃が続いているとされ、短期間で緊張が和らぐかは不透明である。

ドル円が163円を上回るなか、日本当局による口先介入や実弾介入への警戒も強まっている。日米金利差や原油価格、逃避先としてのドル需要が円安要因となる一方、介入への警戒が相場変動を大きくする可能性がある。

まとめ

為替市場では、米金利の上昇と地政学的な不確実性を背景にドルが買われ、円は対ドルで1986年12月以来の安値となった。日米金利差に加え、原油高による日本の輸入コスト増加が円を圧迫している。米・イラン間では外交的な仲介が続く一方、原油輸送を巡るリスクは紅海や黒海にも広がっている。目先は英国の物価統計と米原油在庫に加え、中東情勢、米金利、原油価格、日本当局の為替対応が焦点となる。

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