ドル指数は101近辺へ反発、米・イラン情勢と米利上げ観測が支え
週明けの外国為替市場では、米・イラン情勢を巡る相反する材料を受け、ドル指数が下落後に反発した。仲介者による10日間の停戦案が伝わる一方、戦闘や海上輸送を巡る緊張は続いている。原油高とインフレ懸念を背景に米利上げ観測も強まり、ドルを支える材料となった。豪ドルは対米ドルで0.70台を回復しており、英国の雇用・財政指標、ドイツとユーロ圏のZEW景気期待指数、米ADP雇用者数の週次変化が当日の焦点となる。
足元の為替市場動向
ドル指数は100.95、米・イラン情勢を巡り下落後に反発
月曜日のドル指数は、米・イラン情勢を巡る相反する動きを見極めるなかで下落後に上昇し、米国時間には一時101台に乗せた。終値は前日比0.2%高の100.95だった。米10年債利回りは4.597%、FRBの政策金利見通しを反映しやすい米2年債利回りは4.215%となった。
イラン側の情報によると、仲介者は覚書の履行再開に向け、米国とイランに10日間の停戦期間を提案した。イラン外務省も提案を受け取ったことを確認し、国益に基づいて米国と交渉する可能性があるとした。米メディアは、トランプ米大統領が最近の出来事を巡り、イランに代償を払わせることに注力しているものの、両国間の交渉は続いていると報じた。
一方、米国によるイランへの攻撃は10日目に入り、イランも周辺国の標的への攻撃を続けている。トランプ大統領は、米軍兵士3人の死亡についてイランが直接責任を負うと警告した。イランが支援するフーシ派はサウジアラビアに対する海上封鎖を宣言した。サウジ側は、バブ・エル・マンデブ海峡の航行の安全を確保するため、必要な軍事行動を取っていると表明した。
通商・外交・英国政治でも新たな動き
米国は、カナダから輸入する大部分の製品に50%の追加関税を課すと発表した。エネルギー製品、カリ、魚類、重要鉱物は対象外となる。
ロシア大統領府は、ロシアと米国が外務省レベルで実務的な接触を続けていると説明した。米メディアは、米連邦捜査局(FBI)長官がロシアを訪問する予定だと報じた。
英国では、国王がバーナム氏を新首相に任命し、スターマー氏が退任した。バーナム新首相は複数の閣僚を任命した。
豪ドルは対米ドルで0.70台を回復
豪ドルは週初に上昇した後、上げ幅を縮小したものの、豪ドル/米ドルは0.70台を回復した。ドルが上昇するなかでも反発しており、米インフレ指標が市場予想を下回ったことや、FRBの利上げ見通しの修正が相応に織り込まれたとの見方がある。
オーストラリアの6月製造業購買担当者景気指数(PMI)は51.5、サービス業PMIは50.5となり、いずれも景気拡大・縮小の境目である50を上回った。5月の失業率は4.4%に低下し、雇用者数は4万600人増加した。一方、貿易赤字の拡大と1~3月期の成長鈍化は豪ドルの重荷となっている。
5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比4.0%に低下したが、トリム平均と加重中央値はいずれも3.6%へ上昇した。7月の消費者インフレ期待は4.7%に低下した。市場はオーストラリア準備銀行が8月に政策を据え置くと予想しており、年内の追加引き締めを約19ベーシスポイント織り込んでいる。
英国・ユーロ圏・米国の雇用関連指標を注視
日本時間15時には、英国の5月までの3カ月ILO失業率、6月の公共部門純借入額、失業率、失業保険申請件数が発表される。18時にはドイツとユーロ圏の7月ZEW景気期待指数、21時15分には米国の7月4日までの週のADP雇用者数の週次変化が公表される。
海外市場の見方を踏まえた為替相場分析
本章では、海外金融機関や市場関係者の見解を参考にしながら、為替相場に対する主な見方を整理する。各見解は、公開情報をもとにRYOEXリサーチチームが要約・再構成したものであり、特定の機関や人物がRYOEXの見解を支持・推奨するものではない。
モルガン・スタンレー|強気相場と信用サイクルにはなお余地、金利・為替のボラティリティーのロングを選好
モルガン・スタンレーは最新の年次見通しで、現在の環境を理解するうえで、1997~1998年と2005~2006年が有用な参照例になると指摘した。強気相場にはなお余地があり、株式はクレジットを上回る一方、金利と為替ではボラティリティーのロングがより適しているとの見方を示した。
両時期に共通していたのは、企業活動の活発化、比較的安定したマクロ経済環境、リスクテイクを支える規制緩和である。ラッセル1000構成企業の設備投資は2010~2025年に年平均約7%増加し、2025年には33%増となった。同社は2026年に23%、2027年に26%増加すると予測している。人工知能(AI)が主なけん引役で、エネルギーインフラと「大きく美しい法案」も押し上げ要因になるとみている。こうした動きはアジア市場で特に顕著だとしている。
世界のM&A規模は2024年初めの時点で30年余りの低水準にあったが、その後に発表された案件は前年同期比64%増加した。現在は過去の類似局面と比べ、設備投資の伸びが大きい一方、M&Aの伸びは小さい。ただ、信用サイクルがピークを迎える前に企業の投資意欲が強まる点は共通しているという。
コア個人消費支出(PCE)物価指数、失業率、米国債利回りも、1997~1998年と2005~2006年の平均値に近いと指摘した。安定した成長と対応可能な金利水準の組み合わせが、リスクテイクを比較的長く支えるとの見方である。規制面でも、バーゼル規制の最終化から各地域の貯蓄制度改革まで、方向性はおおむね一致しているとした。
現在の設備投資を担う借り手は過去よりもバランスシートが強く、信用サイクルが長期化し、クレジットスプレッドの拡大幅も過去より小さくなる可能性がある。一方、企業の投資意欲の強まりに加え、政策環境の予測が難しく、中央銀行の政策見通しも不透明になっているため、ボラティリティーの先行きは見通しにくい。このため、同社は1997~1998年をより有用な参照局面と位置付けている。
コメルツ銀行|ECBはインフレを警戒するも9月利上げを確約せず
コメルツ銀行は、原油高と弱い成長シグナルが木曜日の欧州中央銀行(ECB)理事会の主要テーマになるとみている。7月の利上げは事実上選択肢から外れており、市場は9月の25ベーシスポイントの追加利上げを完全に織り込んでいるという。
ラガルドECB総裁はインフレリスクを強調する可能性があるものの、成長への逆風が強まり、情勢も変化しているため、9月の利上げを事前に確約する可能性は低いと予想した。金曜日に発表されるユーロ圏のPMI速報値は、景気回復が依然として脆弱であることを示す可能性がある。今週のデータからも、回復にはなお距離があることが示されるとみている。市場の焦点は木曜日のECB理事会、その後は翌週のFOMCへ移るとの見方である。
Akhtar Faruqui氏|地政学リスクと米利上げ観測がドルを支える可能性
Akhtar Faruqui氏によると、火曜日のアジア時間にドル指数はプラス圏を維持し、101.00近辺で推移した。米・イラン情勢の緊迫化が安全資産需要と原油価格を押し上げ、インフレ懸念やFRBによる利上げへの警戒が再燃したことが、ドルを支えたという。
市場が見込むFRBの9月利上げ確率は約55%と、前日の51%から上昇した。一方、FRB当局者は翌週のFOMCを前に発言を控えるブラックアウト期間に入っており、市場では同会合で政策金利が据え置かれるとの見方が広がっている。
同氏は、地政学リスク、原油高、利上げ観測が重なるなか、短期的にドルが強さを保つ可能性があると指摘した。
パブロ・ピオバノ氏|豪経済の相対的な安定が豪ドルの底堅さを支える
市場アナリストのパブロ・ピオバノ氏は、オーストラリア経済の相対的な安定が豪ドルの底堅さを支えていると指摘した。製造業・サービス業PMIと雇用指標が一定の強さを示す一方、貿易赤字の拡大や1~3月期の成長鈍化が相反する材料となっている。
インフレについては、総合CPIが低下する一方、トリム平均と加重中央値が上昇しており、基調的な物価上昇圧力が残っているとした。消費者インフレ期待は低下したものの、オーストラリア準備銀行がインフレ抑制の目標を達成するまでにはなお距離があるとの見方である。
短期的には、ドルの動向、世界的なリスク選好、地政学情勢が豪ドルを左右する主な要因になるとした。オーストラリアでは、7月23日の月次労働市場報告が次の重要日程となる。FRBの慎重な姿勢、投資家のリスク選好の変化、オーストラリア準備銀行の政策姿勢の修正が、豪ドル相場を動かす可能性があるという。
為替市場の注目チャート
本章では、足元の為替相場を読み解くうえで参考となるチャートを取り上げ、金融政策や金利動向、市場心理の変化を整理する。掲載するチャートやデータは第三者機関の情報をもとにしたもので、RYOEXの見解や将来の価格動向を示すものではない。相場急変の可能性も踏まえ、十分なリスク管理を心がけたい。
米国が8月31日までに対イラン軍事行動を停止する確率は67%
予測市場では、米国が8月31日までにイランへの攻撃行動を停止する確率が67%となっている。市場参加者は紛争が直ちに終結するとはみていないものの、今後1カ月余りの間に一時停戦や軍事的緊張の緩和が実現する可能性については、比較的楽観的にみていることが示されている。
イランの高官筋によると、仲介者は攻撃を10日間停止し、米・イラン間の暫定合意を再開するための時間を確保する案を示した。これを受け、市場では一時停戦後に交渉を再開する可能性が改めて意識されている。一方、月末までに軍事行動が停止する確率は30%未満とされ、短期的な情勢への警戒も残っている。
8月末までの停戦確率が上昇すれば、原油価格とエネルギーインフレに上乗せされているリスクプレミアムが低下し、金利動向を通じた金への下押し圧力が和らぐ可能性がある。仲介が失敗して予測確率が低下すれば、紛争の長期化とエネルギー供給リスクが再び織り込まれる可能性がある。
米景気先行指数は6月に前月比0.2%低下
米国の6月コンファレンス・ボード景気先行指数(LEI、前月比)は0.2%低下し、市場予想(0.1%低下)を下回った。5月は0.1%上昇していた。今後数カ月の成長力が再び弱まる可能性を示す内容となった。
過去1年間では大半の月がマイナスとなり、4月と5月に一時的に持ち直した。米国債市場の一時的な安定、株価の反発、新規失業保険申請件数の低位推移、金融環境や金利スプレッドに関する一部項目の改善が影響した可能性がある。ただし、6月に再びマイナスへ転じたことは、製造業受注、消費者期待、信用環境などの先行項目の弱さを示している。
新規失業保険申請件数や小売売上高が底堅さを保っていることも踏まえると、米国経済は急速な景気後退に入ったというより、足元の雇用と消費が安定する一方、先行きの成長力が弱まりつつある状況に近い。
米住宅ローン金利、既存ローンとの格差は2ポイント超
米国の30年固定住宅ローンの新規金利は約6.55~6.60%である一方、2026年1~3月期時点の既存住宅ローンの平均実効金利は約4.28%にとどまる。両者の差は2ポイントを超えている。
低金利で借り入れている住宅所有者は、現在の約6.5%の金利で新たな住宅ローンを組むことを避けるため、住宅を売却しにくい。こうした低金利の既存ローンによる固定化が、中古住宅の供給を抑えている。一方、住宅価格の上昇と高金利により、初めて住宅を購入する層の毎月の返済負担も増している。
30年固定住宅ローン金利は直近で2週連続上昇し、住宅販売契約件数も減少した。6月の中古住宅販売成約指数は前月比5.4%低下しており、高い資金調達コストが住宅市場を圧迫している。
高い住宅ローン金利は、それ自体がドル高要因になるものではなく、米長期国債利回りの高止まりと、市場が高金利環境を織り込んでいることを反映している。ただし、高金利が住宅取引、建設活動、住宅関連消費を抑え、経済成長をさらに下押しすれば、FRBの金融緩和が改めて織り込まれる可能性がある。その場合、米国債利回りの低下とともに、ドルの金利面での優位性が弱まることも考えられる。
まとめ
ドル指数は、米・イラン情勢を巡る緊張、原油高、米利上げ観測を支えに101近辺まで反発したが、10日間の停戦案により地政学リスクが和らぐ可能性も残されている。市場では9月の米利上げ確率が約55%まで上昇する一方、翌週のFOMCでは政策金利の据え置きが見込まれている。豪ドルは対米ドルで0.70台を回復しており、当面は英国とユーロ圏の経済指標、米雇用指標、ECB理事会、米・イラン間の仲介協議が焦点となる。
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