蓄電所投資が過熱、完成前の売買も広がる
完成前施設の売買も
再生可能エネルギーの普及に欠かせない蓄電所を巡り、資産運用を目的とした投資が広がっている。完成前の施設を売買する動きまで出てきた。太陽光発電の開発ブームを想起させるとして、乱開発への警戒も強まっている。
RE100電力(東京・中央)の蓄電所販売サイト「系統用蓄電池チャンネル」には、完成予定のおよそ30カ所の蓄電所情報が並ぶ。穂垣勇介取締役は「1日に1件は問い合わせがあり、金融、ゼネコン、商社など業種は幅広い。多くが資産運用目的だ」と語る。
接続待ちは長期化
太陽光など発電量が不安定な再エネを広げるには、日中に余った電力をため、夜間に放出する蓄電所が欠かせない。政府が2021年度から開発に補助金を出し始めたことで、各地で計画が相次いだ。
ENEOSホールディングスや関西電力といったエネルギー企業に加え、不動産、金融、商社など異業種の参入も目立つ。太陽光発電や蓄電所の開発を手がけるサンヴィレッジ(栃木県足利市)の武田一夫専務は「太陽光発電所の開発ブームが起きた12年ごろの空気に似ている」と話す。
開発を検討する事業者が大手電力の送電網への接続可否を問い合わせた蓄電所の容量は、26年3月末時点で191ギガワットに達した。運転中の蓄電所の227倍で、原発の出力に換算すると191基分に相当する。接続には電線や変電所の増強が必要となり、多くの蓄電所が稼働待ちとなっている。待ち時間が5年前後に及ぶ例も出てきた。国の補助金も26年度は350億円と、前年度の2倍超に増える。
収益性に資金流入
参入が増えた背景には、政府が収益を得やすい市場を整備したことと、開発から投資回収までの期間が短いことがある。蓄電所事業者は「需給調整市場」を通じ、送配電会社から電力調整能力に応じた収入を受け取る。
国が定める売値の上限は3月中旬まで、1キロワット・30分当たり19.5円だった。この水準で売り続ければ、6億円程度とされる一般的な蓄電所投資は数年で回収できた。回収の早さに着目し、蓄電所を利回り商品や投機対象として扱う動きも目立つ。送電網接続を早く申し込んだ土地や蓄電所を転売するビジネスも生まれた。
政府は投機目的の事業者の増加を懸念する。送配電会社が電力市場を通じて支払う費用は、家庭や企業の電気代に転嫁されるためだ。投機目的の参入が増えれば、この仕組みへの理解を得にくくなる可能性がある。
価格下げに反発
電気代への転嫁を抑えようとしても、売値の上限を引き下げるのは容易ではない。資源エネルギー庁が25年10月の有識者会議で上限価格を7.2円に下げる案を示すと、事業者の反発が広がった。売値が下がれば借入金返済を含む事業計画が大きく崩れるためで、有識者からも撤退を招く恐れがあるとの指摘が相次いだ。
議論は結局、3月から上限価格を15円、9月から10円とすることで決着した。エネ庁担当者は「調整能力を効率的に調達しつつ、国民負担への影響を軽微にする仕組みをつくる必要がある」と述べる。
再エネ業界には、太陽光発電所の開発ブームで苦い経験がある。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)で太陽光は急速に普及した一方、無許可で森林を伐採する悪質な事業者の参入も招いた。蓄電所でも「乱開発が続けば近隣住民との騒音トラブルが増えるだろう」と開発会社幹部はみる。市場の健全な成長をどう確保するかが問われている。
この記事が役に立ったら、ぜひシェアしてください。