超長期債に買い戻しの兆し、メガバンクや生保が動く
異例の銀行マネー
日本の超長期債市場で、金利上昇に一服感が出ている。新発30年債利回りが4%前後まで低下した局面で、メガバンクが買いを検討し始め、大手生命保険会社にも同様の動きが広がりつつある。
「30年債で4%は魅力的な水準だ」と、あるメガバンク幹部は8月上旬に語った。日米協調介入の翌週で、金利はなお上がる余地があるとしながらも、投資妙味は十分とみている。他の大手行からも、30年債の買い始めを示す声が出ている。
大手銀行が超長期債を買うのは異例だ。金利上昇局面では評価損の拡大リスクが大きく、これまで敬遠されてきた。預金という短めの負債を抱え、融資という運用先もあるため、日銀の金融正常化局面では保有国債の年限短縮が進んできた。現時点での保有はほぼない。
上昇に一服感
それでも買いに動く背景には、超長期債で上昇基調が鈍ってきたことがある。新発10年物国債利回りは一時2.875%をつけ、市場では3%台を試す展開が意識される。日銀の利上げ観測を映しやすい中期債も上昇が目立ち、13日には新発5年債利回りが2.125%と過去最高を更新し、新発2年債利回りも1.645%と1995年5月以来およそ31年ぶりの高水準となった。
一方で、新発30年債利回りは日米両政府の協調為替介入後に一時3.8%台まで低下した。足元では4%台に戻したものの、5月中旬や7月上旬の直近高値に比べると上昇ペースは鈍っている。7月には片山さつき財務相が、GPIFを含む年金基金による日本の金融資産への投資拡大を後押ししたいと発言し、国内投資増加観測から国債が買われ、超長期金利が一時低下した。
GPIFの運用資産は約300兆円ある。市場では、資産配分を5%見直すだけで15兆円規模の資金が動くとの試算がある。複数の金融機関幹部は、1回5兆円とされる為替介入を大きく上回る規模になり得るとみている。
生保にも広がる関心
銀行マネーが超長期債市場に本格流入するのはなお早計との見方もある。大手行を取材すると、積極派と慎重派が分かれる。別の大手行幹部は、銀行業はもともと中期債までが中心で、30年債は慎重に見極めるべきだと話す。預金獲得が頭打ちとなる一方、国内企業向け融資需要はなおあるため、銀行が一斉に国債投資へ向かう状況でもない。
それでも、長らく生保や年金基金、海外投資家が中心だった市場でメガバンクの名前が出る意味は大きい。生保や年金基金に買いの意欲が連鎖する可能性があるためだ。住友生命保険では、25年度からの新資本規制に備えた超長期債の積み増しは一巡したが、円建て貯蓄保険の販売増で生じる新規資金の約半分を日本国債に振り向ける。泉忠和運用企画部長は、30年債について、金利が4%近辺で財政の信認が確認され、日銀がビハインド・ザ・カーブに陥らないとみえれば買いやすくなるとの見方を示す。
市場安定の契機に
こうした動きは、超長期債市場を安定させる契機になり得る。日銀の利上げ観測が強まれば2年債や5年債にはなお上昇圧力がかかるが、20年債や30年債では高い利回りが買い手を呼び込む局面に入りつつある。生保が大手行の動向を見ながら再び積み増しに動けば、海外投資家主導の値動きを和らげる余地が広がる。
影響は債券市場に限らない。日米金利差は依然大きいが、GPIFや年金、生保が国内資産への配分を増やせば、円売り圧力の緩和につながるとの見方がある。もっとも、高市早苗政権の積極財政運営への警戒感は残り、国債発行の動向次第では長期金利が再び上がる可能性がある。銀行という新たな買い手が加わっても、その前提は財政への信認が保たれることだ。
2010年代以降、日本の機関投資家は超低金利を背景に海外債券投資を強めてきた。海外勢の売買で振れやすくなった超長期債市場が銀行マネーの流入で落ち着けば、長期資金が再び日本へ戻る契機になる可能性もある。
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