新関税発動で還付期待後退、企業は再び事業計画の見直しへ
米政権は無効となった相互関税に代えて、60カ国・地域を対象に10%と12.5%の新関税を発動した。緩和措置は盛り込まれたが、関税還付や負担軽減を見込んでいた企業には再び事業計画の見直しが迫られている。
新関税でコスト上昇懸念
「関税をめぐる不確定要素は今後も残る」。米バイクメーカー、ハーレーダビッドソンのアーティー・スターズ最高経営責任者(CEO)は2026年4〜6月期の決算説明会で、こう述べ、新関税下でも経営の見通しがなお不透明だとの認識を示した。
米国靴流通小売業者協会(FDRA)も、追加的な通商措置が企業と消費者の双方のコストを押し上げる可能性があると指摘した。発動前には、無効になった相互関税の還付効果を強調する説明が米企業の間で相次いでいたが、消費財企業の一部では再び関税負担が増すことになり、期待は後退した。
除外拡大でも負担残る
米エール大学の政策研究センター「バジェットラボ」は7月24日、新関税を織り込んだ26年末時点の平均法定税率を11.8%と試算した。従来の相互関税が発効していた25年12月は14%台で、2月の無効判決後は7%台まで低下していた。
もっとも、新関税には適用除外の拡大など複数の緩和措置が含まれる一方、米国野村証券の雨宮愛知氏は平均実効関税率が7月末の7%から8%に上昇するとみる。米中小企業連合「ウィー・ペイ・ザ・タリフス」が米小規模事業者241社を対象に行った調査では、関税払い戻しの使い道として53%が「負債の返済に充てる」と回答した。返金を受け取る前に追加負担が生じれば、財務の悪化は避けにくい。
同団体の報告書では、関税引き上げへの対応として85%が「利益率を引き下げた」、83%が「販売価格を引き上げた」と答えた。エール大バジェットラボは、新関税を踏まえた米家計の年間関税負担を1100ドル(約17万5000円)と試算しており、消費者へのしわ寄せは続く見通しだ。
争点は通商法301条に
企業側の楽観論が薄れている背景には、従来の関税より差し止めが難しくなる可能性がある点もある。新関税は、緊急事態権限を用いた相互関税とは異なり、不公正な貿易慣行に制限をかける通商法301条に基づく。
トランプ政権は、各国の強制労働対策の不備が不公正な競争を生み、市場をゆがめているとして対抗措置に位置づける。KPMG米国で税務政策関連のアドバイザリー業務を担うルイス・アバッド氏は、301条には権限が明記されており、異議申し立ては個別措置ごとの争いになる可能性があると話す。法廷闘争で撤回や変更を求めるハードルは、従来より高いとの見方だ。
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