金相場、米雇用統計と中銀買いで2カ月ぶり高値
金相場に資金が戻っている。弱い米雇用統計を受けて米利上げ観測が後退したうえ、中国など中央銀行の買いが続き、2カ月ぶりの高値を付けた。基軸通貨である米ドルへの信認低下も買いを後押ししている。
相場を押し上げた材料
金価格の国際指標の一つであるロンドン現物価格は7日、1トロイオンス(約31.1グラム)当たり4371ドルまで上昇し、6月以来の高値となった。ニューヨーク先物(中心限月)も4432ドルと、同じく2カ月ぶりの高値を付けた。直近の買い材料は、7日公表の米雇用統計だった。
雇用者数が前月比2万3000人減となり、市場予想の8万3000人増に反して減少したことで、雇用情勢の悪化を背景に米連邦準備理事会(FRB)の利上げ観測は後退した。金は利息を生まないため、金融政策の先高観が和らぐと投資妙味が増しやすい。
資金流入と中銀買い
マーケット・ストラテジィ・インスティチュートの亀井幸一郎代表は「株式や債券などと一緒に複数の資産を運用する機関投資家などが再び金を買い始めた」と話す。
ドル高が一服していたことも追い風となった。7月末の日米協調為替介入で円安・ドル高の修正が進み、主要通貨に対するドルの総合的な強さを示すドル指数は節目の100を下回った。差金決済取引(CFD)ブローカー、KCMトレードのチーフマーケットアナリスト、ティム・ウォーターラー氏は「金とドルは歴史的に逆相関の関係にあり、為替介入は金相場の底堅さを高めた」と指摘する。
ファンドへの資金回帰も鮮明だ。現物の金を裏付けとする上場投資信託(ETF)のうち世界最大級の「SPDRゴールド・シェアーズ(GLD)」の残高は、7日までの1週間で金額にして110億ドル(9%、約1.7兆円)増え、裏付けとなる金の量も10トン増加した。
投資家心理を強気に傾けている根底には、中央銀行による金買いがある。代表格は中国だ。中国人民銀行(中央銀行)が7日公表した7月末のバランスシートによると、金の保有量は前月から20トン増えた。増加幅は2023年10月の23トン以来の大きさとなる。買い増しは1999年12月以降で最長の21カ月連続となり、米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃があった2月以降も購入を拡大させている。
国際調査機関のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、2026年4〜6月に世界の中央銀行は288.9トンの金を買い越した。同期間としては遡れる10年以降で最大だった。ポーランド、中国、ウズベキスタンがけん引した。
今後の焦点
オーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)外国為替・コモディティ営業部ディレクターのヨム・グリム氏は、安値での押し目買いに加え、「米国・イスラエルとイランの軍事衝突は中銀の金需要を強めている」とみる。
米軍がイラン攻撃を開始した2月以降、短期的には原油高騰に伴う米利上げ観測の拡大を通じて金相場を押し下げる局面もあった。ただ、米国が力による現状変更で国際秩序を損なったとの見方は根強い。亀井氏は「戦費膨張による財政悪化もあり、基軸通貨ドルの信認は一段と揺らぐ」と分析する。
WGCが世界の中央銀行を対象に2月5日から5月19日まで実施した調査では、回答者の84%が5年後には外貨準備に占める金の割合が増えると答えた。前年の76%から上昇した一方、ドルの割合は74%が5年後に減ると回答した。
もっとも、相場がこのまま上昇し続けるとは限らない。中東情勢はなお不透明で、原油価格にも急騰リスクが残る。オーストラリアABCリファイナリーの機関投資家市場グローバル責任者、ニコラス・フラッペル氏は、短期的にはロンドン現物価格で4420ドルまで上昇余地があるとしたうえで、「投資家は改めて米インフレ指標や原油相場をにらみながら、金の上値を探る展開になる」と述べた。
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