個人向け国債の見直し、相続税軽減案が年末改正の焦点に
財務省は2026年中にも個人向け国債の商品性を見直す具体案をまとめる。与野党では相続税の軽減策も浮上しており、年末の税制改正で論点になる可能性がある。家計の金融資産の底上げにつながるとの期待がある一方、投資先の偏りや不公平な税優遇を招くとの批判も根強い。
購入促進策を探る動き
片山さつき財務相は7月14日の記者会見で、「やっぱりやっていく時じゃないか」と述べ、個人向け国債の購入促進策を検討する考えを示した。年内にも具体策を打ち出す方針で、与野党の間では個人保有を広げる必要性を求める声が強まっている。
国民民主党は7月、少額投資非課税制度(NISA)の対象に国債を加え、利子や売却益、相続税を非課税とする法案を参院に提出した。現在はNISAの対象外だ。株式や投資信託などリスク資産に偏る対象商品を見直し、預貯金を多く持つ高齢者の投資を促す狙いがある。自民党の中西健治衆院議員も6月18日、党資産運用立国議連の会合で個人向け国債にかかる相続税の減免を提起し、世代を超えて保有しやすくなると主張した。
慎重論と公平性
与野党が税制優遇を求める背景には、国債に家計資金を取り込む余地の大きさがある。日銀の資金循環統計によると、家計が持つ国債が発行残高に占める比率は26年3月時点で1.7%にとどまる。日銀が政策金利を引き上げ、異次元緩和からの脱却に伴って国債買い入れ額の減額を進めるなか、新たな受け皿づくりが課題になっている。
ただ、実現にはなお課題が多い。日本証券業協会の日比野隆司会長は7月29日の記者会見で、「貯蓄から投資、企業に成長資金を流すというNISAの趣旨を踏まえ、慎重に考えていただく必要がある」と述べ、NISAへの組み入れにくぎを刺した。現在のNISAは株式や投資信託の売却益や配当にかかる所得税、住民税を軽減するが、相続税は対象に含まれていない。国債だけを優遇すれば、他の商品より選ばれやすくなるとの見方がある。
公平性の面でも論点は多い。配偶者と子ども2人の家庭では、相続財産が4800万円を超えると相続税の対象となる一方、配偶者は1億6000万円までか法定相続分の範囲なら課税されない。実際に相続税の課税対象となるのは被相続人の約1割にとどまる。軽減策が導入されれば恩恵は富裕層に偏るとの見方があり、銀行関係者は「国債を持つインセンティブが相当高まる」とみる。
財務省幹部も「個人向け国債だけ相続税を優遇する理由が見つからない」と話す。別の幹部は税収減への懸念を示し、インフレによる資産価格上昇を背景に相続税収が25年度に3.8兆円と過去最高を更新した点を挙げた。全国銀行協会の加藤勝彦会長も7月16日の記者会見で、銀行預金から個人向け国債への資金移動が過度に進めば、成長資金の供給に影響が出る可能性があると指摘した。
相続税対策では、原則時価で評価される有価証券より、実勢価格より低く算定されることの多い不動産が有利とされる。大和総研の是枝俊悟主任研究員は、金融資産と不動産の相続税上の扱いの差を是正するなら、NISAに入る資産全般への相続税優遇を検討する余地があるとの見方を示した。
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