食料品消費税1%案、高市政権が財源確保の壁に直面
高市早苗首相は30日、食料品の消費税率を1%に引き下げる案について、赤字国債に頼らない考えを重ねて示した。だが、必要とされる約5兆円の財源は具体策が見えず、成長投資や防衛費との両立もなお不透明だ。
財源のめどは立たず
食料品の消費税を1%に下げ、残る1%分を現金給付で補う「実質ゼロ」を実現するには、約5兆円の財源が必要になる。首相に近い一部の有識者からは、税収の上振れ分や外国為替資金特別会計の活用案が出ている。
ただ、いずれも実際に当て込めるかは不確かだ。候補の多くはすでに用途が決まっているか、安定財源とみなせるだけの根拠に乏しい。
歳出拡大が重荷に
税収はインフレの追い風で25年度まで6年連続で過去最高を更新した。一方、物価高を反映して当初予算の歳出も増え続けている。税収だけでは賄い切れず、穴埋めには赤字国債を発行してきた。減税分まで吸収できる余力は大きくない。
27年度予算でも、資材高や人件費上昇を受けた公共事業の単価引き上げや、医療・介護の担い手の賃上げなどで歳出増が見込まれる。金利上昇に伴い利払い費も膨らむ見通しだ。税収増を消費減税に回せば、他の歳出を圧迫しかねない。
防衛費と両にらみ
外為特会の活用も容易ではない。高市首相は1月、川崎市内の演説会で外為特会について「運用がホクホク状態だ」と述べたが、政府内には防衛力強化を踏まえると消費減税に回せる余地は乏しいとの見方がある。
外為特会では米国債の利子収入を中心に毎年剰余金が発生し、25年度は約5兆円を見込む。例年は約3兆円を一般会計に繰り入れており、このうち約8000億円は防衛力強化の財源に充てることが決まっている。
外貨準備高には円安進行に伴う含み益もあるが、実現益に変えるには資産の大半を占める米国債の売却が必要になる。実質的には円買い・ドル売りの為替介入となり、米国の理解を得るのは難しい。
決算剰余金も決め手を欠く。25年度決算では2.6兆円の剰余金が生じたが、財政法はその2分の1以上を国債償還に充てるよう定める。自由に使える1.3兆円のうち7000億円は防衛財源に回すことが決まっており、残る約6000億円は年末の予算編成に持ち越される。
租特見直しの実効性は不透明
政府が財源の一つに挙げる「日本版DOGE」による租税特別措置や補助金の見直しも、実現の見通しは立っていない。租特は120件を対象に見直しが進むが、すべて廃止しても捻出できるのは約1兆円にとどまる見通しだ。足元で廃止を表明したのは1件だけだ。
賃上げ税制や研究開発税制のように利用企業が多い大型の租特を廃止できれば効果は大きい。ただ、業界団体とつながりの深い議員の反発が予想され、見直しの壁は高い。逆に、廃止しやすい租特や補助金は財源効果が小さい。
消費減税のために約5兆円を確保できても、ほかの看板政策の財源まで手当てできなければ国債増発につながり、市場の信認を損なう恐れがある。
国債増発への懸念
政府は8月末に締め切る27年度予算の概算要求で、成長投資・危機管理投資の上限を各省庁に設けない方針だ。40年度までに370兆円超とする官民投資計画では、6月公表の試算で国の支出を毎年10兆円と置いたが、実際の歳出増は読めない。税収増や追加の税外収入は、消費減税と財源を奪い合う関係にある。
年末には27年度以降の防衛力強化も議論になる。25年度の防衛費は補正予算を含めて約11兆円と、すでに国内総生産(GDP)比2%に達した。
新たに策定する防衛力整備計画では、指標とするGDPの基準が26年度水準に引き上げられる。同じ2%でも必要な防衛費は13.8兆円となり、25年度から約3兆円増える。北大西洋条約機構(NATO)や韓国などが掲げるGDP比3.5%を目指すなら、必要額はさらに膨らむ。
内閣府が30日に公表した中長期の経済財政試算では、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)が27年度に1.4兆円の黒字になる見通しだった。ただ、この試算には消費減税は織り込まれていない。5兆円規模の実質減収があれば、黒字は赤字に転じかねない。
財務省幹部は「個別政策ごとに財源を論じても意味がない。歳出と歳入を一体で見て、最終的な国債発行額をどこまで抑えられるかで評価するしかない」と話している。
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