FASF、のれんの定期償却を維持 選択制導入は見送り
現行基準を維持
FASFは、企業のM&Aで生じるのれんの償却について、定期的に費用計上する現行基準を維持する方針を固めた。企業が償却か非償却かを選べる選択制も導入しない。27日に開く諮問会議で決定する。
FASFは約1年にわたり専門家の意見を踏まえて議論を重ねたが、非償却の導入を支持する声は広がらなかった。日本はのれんを非償却とするIFRSや米国会計基準とは異なる立場を続けることになる。
のれんは、買収先の純資産額を上回って支払った金額を指し、ブランドや技術など目に見えない資産への対価とされる。日本基準は、のれんの価値は時間とともに減るとの考え方に基づき、20年以内の定期償却を原則としてきた。償却を続ければ毎期の利益は押し下げられる一方、買収した事業の収益が悪化しても、突発的な巨額減損に追い込まれるリスクは抑えやすい。
減損リスクと比較可能性
一方、非償却にすれば毎年の費用負担は小さくなるが、価値が下がった場合には大きな減損損失が発生する恐れがある。IFRSや米国基準では毎年1回の減損テストを行い、減損計上の要否を判断する。
米国、欧州、日本の主要企業の財務諸表を分析すると、株主資本に対するのれんの規模の中央値は米国と欧州が20〜30%だったのに対し、日本は1%にとどまった。米国では100%を超える企業も16%あった。FASFは、こうした財務リスクの大きさを踏まえ、非償却を採用しない判断をしたとみられる。
日本基準を使う上場企業は約3600社に上り、基準を変更すれば膨大な時間と費用がかかる。FASFは、コストをかけてまで制度を変える利点も十分ではないと判断したもようだ。
開示の拡充と企業の選択
定期償却には、M&Aを積極的に進めるほど利益が少なく見えるとの批判もある。経済同友会は、のれん償却がM&Aの障害になり得ると主張してきた。会計基準の違いで利益の見え方が変われば、投資家は日本企業を米欧企業と同じ物差しで比べにくく、株価に企業価値が反映されにくい。
こうした問題を和らげるため、FASFは傘下の企業会計基準委員会(ASBJ)に対し、決算書類で「のれん償却前利益」の開示を検討するよう提言する。この開示が広がれば、他の会計基準を使う企業との比較はしやすくなる見通しだ。
のれんを非償却にしたい日本企業には、IFRSを採用する選択肢もある。東京証券取引所に上場する315社が6月末時点でIFRSを適用済みか、適用を決めている。今後は、M&Aによる成長を重視する企業でIFRSへの移行が進む一方、財務リスクを重視する企業は日本基準にとどまる傾向が強まりそうだ。
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