ファストリ、売上高3兆9700億円へ上方修正 H&Mを上回る公算
海外ユニクロが伸長
ファーストリテイリングは9日、2026年8月期の連結売上高見通しを3兆9700億円に引き上げた。スウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)を約8%上回る水準となる見通しで、衣料品の製造小売り分野では世界2位に浮上する可能性がある。海外ユニクロ事業の成長が押し上げ役となっている。
同社が発表した25年9月〜26年5月期の9カ月間連結決算(国際会計基準)では、売上収益が3兆651億円と前年同期比17%増えた。今期は3四半期連続で四半期ベースの売上収益が1兆円を超え、9000億円前後のH&Mとの差も広がっている。
差別化と価格見直し
今期の売上収益見通しは前期比17%増の3兆9700億円で、従来予想から700億円上積みした。純利益見通しも15%増の5000億円に200億円引き上げた。上方修正は今期3回目となる。
9日の決算説明会で岡崎健最高財務責任者(CFO)は「成長の勢いはグローバルで続いている。潜在的な需要に応え切れていない」と述べた。
けん引役の海外ユニクロ事業は増収率が2割前後と高い。現地通貨ベースで減収傾向のH&Mや、1桁成長にとどまるインディテックスと比べても伸びが目立つ。背景には、製品コンセプトの差別化と価格帯の引き上げがある。
ユニクロは手ごろな価格で高品質な「ライフウエア(究極の普段着)」を掲げる。トレンド色の強い商品が中心のインディテックスやH&Mとは性格が異なる。JPモルガン証券の村田大郎シニアアナリストは「同様のコンセプトを掲げる大きな競合は世界でも見当たらない。欧米でのアパレル市場規模に対するシェアは1%未満だが、それだけ成長余地がある」と指摘する。
欧米では主要都市の一等地に旗艦店を構える戦略がブランド認知の拡大につながった。5月末時点の店舗数は欧州が95店、北米が120店で、今後も欧州で年15店、北米で年25店程度の出店を続ける方針だ。
利益率は18%見通し
ファストリはかつて低価格のイメージが強かったが、近年は商品価値に見合う適正価格を重視する方針に転換している。品質や機能を高める一方で値上げも進めた。欧米での販売価格は日本のおよそ2倍で、ZARAより低くH&Mより高いか同水準にある。
例えば日本では女性向け半袖Tシャツが1500円、ジーンズが4990円前後。欧州ではそれぞれ14.9ユーロ(約2700円)、49.9ユーロ(約9200円)となっている。
価格改定や発注管理の強化によって値引き販売を抑えたことも寄与し、15年8月期に10%だった営業利益率は今期18%に達する見通しだ。
H&Mは格安通販と競合
一方、H&Mは中国発の格安ネット通販SHEIN(シーイン)やTemu(テム)の台頭で苦戦している。営業利益率は7〜9%で推移し、不採算店の閉鎖など改革を進めている。08年の日本上陸時にファストファッションブームをけん引した勢いはない。
ファストリは株式市場でも成長期待が高い。株価が1株当たり利益の何倍で評価されているかを示すPER(株価収益率)は56倍と、8日時点でインディテックスの25倍を大きく上回る。
業績面ではまだ差があるものの、時価総額はインディテックスの31兆円に対し、ファストリは27兆円まで迫った。新型コロナウイルス禍で欧米市場が混乱した時期には一時逆転する場面もあった。業績次第では、本格的に上回る可能性も出てきた。
円安が逆風、値上げも
ただ、課題も残る。利益率は20%のインディテックスにまだ届かない。インディテックスではZARA以外の姉妹ブランドも約20%の高い利益率を確保している。
ファストリのジーユー(GU)事業は前期まで利益率が10%に満たなかった。足元では改善しているものの、第2の柱としてはなお成長途上だ。中価格帯のグローバルブランド事業も前期は赤字だった。
円安も国内事業の重荷になっている。岡崎CFOは「為替予約を続けているが、状況は厳しくなっている。秋冬の一部商品で値上げせざるを得ない」と説明し、商品全体で平均4%弱の値上げを見込むとした。
同社は長期目標として売上収益10兆円を掲げる。ゴールドマン・サックス証券の河野祥投資調査部長は「ベーシックな商材のため、一過性のブームで終わるとは考えづらい。欧米市場でもトップシェアを目指すポテンシャルは十分にある」とみている。
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