アンソロピック規制でアマゾン、悪用リスクを政府に伝達
米政府が先端AI「クロード・ミュトス」などの海外提供を禁じた問題で、米アマゾン・ドット・コムの幹部が、同モデルの悪用リスクを政府側に事前に伝えていたことが分かった。
安全策の抜け穴に懸念
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などによると、アマゾンは指示文を工夫すれば安全策を回避できる「抜け穴」に関する情報を持っていた。テック企業と政権幹部の協議の場で、アンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)が懸念を伝えたという。
政府は実際に悪用可能かを検証したうえでアンソロピック側と協議し、12日に同モデルを輸出管理対象に指定して、海外や外国人への提供を禁じる方針を固めた。
提供停止と対立
アンソロピックは政府の禁止決定を受け、12日に「クロード・ミュトス」と、同等性能の一般向けAIモデル「フェイブル」の最新版の提供を全世界で停止した。より性能の低い別のAIは利用できる。
同社は4月にミュトスを発表した際、サイバー攻撃などへの悪用リスクが高いとして、利用先を一部企業や政府に限定していた。安全策を施したうえで、別名のフェイブルとして9日に一般公開したばかりだった。
一方、アンソロピックは12日の発表で、抜け穴は軽微で安全面に問題はないと反論。政府が禁輸対象とした判断には「誤解がある」と主張した。
業界内の温度差
米ニュースサイトのアクシオスによると、11日以降はアマゾンの要請で5社以上の企業が政府側に同様の懸念を伝えた。政府高官のデービッド・サックス氏は13日、X(旧ツイッター)で、政府は抜け穴を修正するかAIモデルを非公開にするよう求めたが、アンソロピックのダリオ・アモデイCEOは応じなかったと述べた。
アマゾンは日本経済新聞に対し、多くの企業や政府・自治体を顧客に持つクラウド大手として、政府機関からセキュリティーリスクの助言を求められることは珍しくないと説明した。相談があっても詳細は公表していないとしている。
アマゾンとアンソロピックの関係
アマゾンはアンソロピックの主要株主で、4月には最大250億ドル(約4兆円)の追加出資を発表した。アンソロピックは、アマゾンのクラウド「AWS」を通じてAIモデルを提供しており、開発や運用にはアマゾン独自設計のAI半導体も使っている。
アンソロピックは2021年創業で、「安全重視のAI」を掲げる。AIモデル「クロード」を軸に、プログラミング向けのコード生成ツールなど企業向け利用を広げてきた。企業価値は9650億ドルに達し、1日には新規株式公開(IPO)に向けた目論見書を提出していた。
米政府とはAIの軍事利用を巡って対立しており、2月には国防総省が同社をサプライチェーン(供給網)の安保リスクに指定した。アンソロピックは3月に米政府を提訴し、訴訟は現在も続いている。
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