FRB新議長にウォーシュ氏、改革と独立性を掲げ就任
ウォーシュ氏、ホワイトハウスで宣誓
米連邦準備理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長は22日、ホワイトハウスで就任宣誓式に臨み、「改革志向のFRBを率いる」と表明した。同席したトランプ大統領は「私を見ずに自らやりたいことをやってほしい」と述べ、独立した運営を促した。
今回の宣誓式は、FRB本部で行うのが通例だった中で約40年ぶりにホワイトハウスで実施された。式典は約30分で、そのうち20分あまりをトランプ氏が演説に充てた。トランプ氏はウォーシュ氏を持ち上げつつ、「彼には独立して、ただ素晴らしい仕事をしてほしい」と語り、金融政策への直接的な圧力と受け取られかねない発言は抑えた。
一方で、批判の矛先はパウエル前議長の下で続いたインフレに向けた。バイデン前政権にも触れながら、「米国民は史上最悪のインフレに苦しんだ」と強調した。宣誓は連邦最高裁のカバノー判事が執り行い、トランプ氏によるとトーマス判事も出席した。両氏は、最高裁が2月にトランプ関税の違憲判決を出した際、反対意見を示していた。
就任式にはベッセント財務長官、ハセット米国家経済会議(NEC)委員長、ラトニック商務長官らも参加した。バージニア州知事を務めた共和党のグレン・ヤンキン氏ら、トランプ氏に近い政治家の姿もあった。
インフレ抑制とバランスシート縮小
ウォーシュ氏は宣誓後、過去の成功と失敗を踏まえ、「改革志向のFRBを率いる」と改めて表明した。4月の指名公聴会では、FRBの独立性を守るにはインフレ抑制が重要だと位置づけた。
同氏は、パウエル氏が率いたFRBが4〜5年前のインフレ加速を見逃したのは「致命的なミス」だと批判し、「新たなインフレ対策の枠組み」など根本的な政策改革が必要だと訴えてきた。
加えて、FRBの資産と負債を適正な規模に戻すことも重視している。FRBのバランスシートは2008年のリーマン・ショック以降に拡大を続けた。公聴会では「緩やかかつ慎重なプロセスを経て縮小する必要がある」と述べた。
ウォーシュ氏は、国債買い入れの拡大などによるバランスシートの膨張を「形を変えた財政政策」とみている。中央銀行が財政拡張を下支えし、政治に巻き込まれたとの問題意識があり、縮小を通じて財政との関与を薄め、金融政策に専念すべきだとの立場だ。
情報発信見直しに市場警戒
もっとも、改革には気がかりもある。ウォーシュ氏はFRBの情報発信のあり方を見直す考えを示している。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は年8回の会合のうち4回、参加者が適切と考える将来の政策金利水準を示すドットチャートを公表する。FRB理事や地区連銀総裁も、それぞれ景況感や金利見通しを積極的に語ってきた。
ウォーシュ氏は公聴会で、こうした仕組みが政策決定者を予測に縛り付けるとの問題意識を示した。FOMCでは予断を持たず、柔軟に議論すべきだとの考えがある。
市場では、FRBと市場の対話が減れば透明性が低下し、新たな政策公表時に混乱を招く可能性があるとの懸念がある。
ウォーシュ氏は22日の就任宣誓式で、物価と雇用の安定というFRBの使命を追求すれば、「インフレ率は低下し、経済成長率は高まり、実質所得は増える」と自信を示した。
トランプ氏、過去には利下げ要求も
ただ、公聴会と同様、当面の金融政策の方向性には踏み込まなかった。前任者にならえば、ウォーシュ氏は近く議会証言に臨み、金融政策について意見を示す見通しだ。6月16〜17日のFOMCからは、同氏が議論を取り仕切る。
足元では雇用が総じて安定する一方、ガソリン高を背景とした物価上昇が目立ち始めている。FRB内ではインフレ警戒が強まるが、政治的圧力も高まりかねない。
トランプ氏はウォーシュ氏に政策判断を委ねる姿勢を示したものの、これまでFRBに対しては直接的な利下げ要求を繰り返してきた。演説や交流サイトだけでなく、議長に電話をかけて圧力をかけたこともあったとされる。パウエル氏は2023年のイベントで、第1次トランプ政権時に時折電話を受けていたと明かした。FRBの独立性を尊重すると公言していたバイデン前大統領からは、一度も電話はなかったという。
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