ドローン攻撃拡大でロシアに動揺、戦勝記念日も縮小
ロシアで5月上旬、春の連休を彩るはずの時期に、ドローン攻撃の拡大が市民生活と戦勝記念日の行事に影を落とした。中部チェボクサリでは5日、ウクライナの複数の攻撃用無人機が軍事関連工場近くの集合住宅に突入し、28棟が損壊、少なくとも2人が死亡、35人が負傷した。
射程2千キロメートルに接近
チェボクサリはウクライナ国境から最短でも約1000キロメートル離れる。さらに4月25日には、1500キロメートル超離れたチェリャビンスクなどウラル地方の工業都市も初の大規模攻撃を受けた。ゼレンスキー大統領は、これらの攻撃でドローンの航続距離が最長約2000キロメートルに達したと明らかにした。
米ブルームバーグ通信によると、ウクライナのドローンはロシア国土の4分の1を射程に収め、総人口の70%が暮らす地域が危険圏に入った。主要長距離ドローン「リューティー」は2022年後半に開発が始まり、23年から実戦投入された。当初は航続距離が約1000キロメートルとみられていたが、その後の改良で1.5〜2倍に伸びた。
戦勝記念日にも波及
こうした攻撃を受け、9日の対独戦勝記念日の軍事パレードにも影響が及んだ。安全保障上の理由から、クリミア半島に加え、西部や南部の少なくとも7州が行事中止を決めた。首都モスクワのパレードでも、戦車やミサイルなど地上兵器の隊列は参加せず、2007年以来の異例の措置となった。地方都市でも同様に縮小が相次いだ。
モスクワには連日ドローンが飛来し、市当局によると7〜8日の2日間だけで100機超を撃墜した。16〜17日未明には今年最大級の攻撃があり、モスクワ近郊では女性2人を含む3人が死亡した。政治評論家アレクセイ・ムーヒン氏はテレグラムで、安全確保は最優先だとしつつ、「敵が我らを戦勝の日から象徴的に閉め出すことも許されない」と述べ、祝典開催の判断は中央・地方の政府にとって難しくなったとの見方を示した。
モスクワ市民の不安を強めているのは、厳しい通信規制でもある。9日は祝典終了までモバイル通信が不通となり、買い物の決済や銀行送金にも支障が出た。通信規制はウクライナのドローン攻撃への対策として、遠隔操縦や誘導に使われるモバイル通信を遮断する狙いで導入されたとみられる。大都市を中心に断続的に続いており、インターネットや通話だけでなく、経済活動にも影響が広がった。
社会合意に揺らぎ
プーチン大統領は4月23日の政府会議で、「優先順位はつねに人々の安全確保だ」と述べ、テロ防止の観点から規制を容認する姿勢を示した。ただ、市民の間では情報統制や言論弾圧の強化への懸念が広がり、政権が不人気政策や追加動員を準備しているのではないかとの見方も出ている。
ロシアでは2022年2月の全面侵攻開始後も、国境地帯を除けば戦前に近い日常が保たれてきた。プーチン氏はその見返りに、自身と戦争への支持を求めてきたが、その「社会合意」にはほころびが見える。政権寄りの全ロシア世論調査センターによると、プーチン氏を信頼すると答えた割合は24年12月に80%超だったが、4月中旬には71%に低下した。
別の世論調査機関レバダ・センターの4月調査では、和平交渉を始めるべきだとの回答が6割を超えた。9日の一連の行事後、プーチン氏は記者団に「(戦争は)終結に向かっている」と述べ、国民の不安払拭に努めた。
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