台湾問題を前提に習氏が新たな米中関係を提起
習近平国家主席は14日の米中首脳会談で、新たに「建設的戦略的安定関係」の構築を提唱した。前提には台湾問題で中国の立場を尊重することがある。台湾への武器売却を巡るトランプ米大統領の判断次第では、米中関係が再び緊迫するリスクを抱える。
台湾武器売却が火種
トランプ氏は15日に放送された米FOXニュースのインタビューで、台湾への武器売却を承認するかと問われ「保留中であり中国次第だ。我々にとって非常によい交渉の切り札だ」と述べた。「するかもしれないし、しないかもしれない」とも語り、明言は避けた。
トランプ政権は2025年12月、台湾向けとして過去最大規模の総額111億ドル(約1兆7600億円)の売却を決定した。ロイター通信は3月、さらに140億ドル規模の武器売却を承認する可能性があると報じている。
中国は台湾の頼清徳政権を「独立分裂勢力」と位置づけ、米国の武器売却に強く反対してきた。習氏は2月のトランプ氏との電話協議でもこの問題に触れ、「慎重に処理する必要がある」とくぎを刺していた。
14〜15日に北京で開いた首脳会談でも、習氏は台湾問題を適切に処理できなければ「両国は対立・衝突し、中米関係を極めて危険な境地に追い込むことになる」と警告した。異例の強い表現で、米国による台湾支援を控えるよう迫った形だ。
経済協議にも影響
トランプ政権が計画通り武器売却を実行すれば、中国の反発は避けられない。貿易や投資を中心に対米報復に踏み切る可能性があり、米国産大豆や牛肉の購入拡大を取りやめれば、トランプ氏にも打撃となる。
共和党の劣勢が伝えられる11月の米中間選挙を控え、農業州の支持を固めたいトランプ氏にとって、中国は弱点を握る存在になりつつある。
王毅共産党政治局員兼外相は15日、経済・貿易協力の詳細を巡る米中協議は継続中だと説明した。米側によると、中国が購入を約束した米ボーイングの航空機は200〜750機と幅がある。台湾をめぐる米国の出方次第では、購入規模を減らす選択肢もあるという。
香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは15日、中国が台湾問題をレッドラインに位置づけていると報じた。王氏によると、「建設的戦略的安定関係」は今後3年間、さらにそれ以上の期間にわたる米中関係の戦略的指針となる。協力を軸に相違を管理する概念だが、相手の核心的利益と重大な懸念の尊重が条件になる。
習氏はかねて台湾問題を「核心的利益の核心」と表現してきた。過去には、対立を念頭に「火遊びは必ず身を焦がす」と警告し、米国の台湾関与への強い懸念を示してきた。交渉カードとみなすトランプ氏の姿勢が、新たな火種になる可能性がある。
習氏は2013年6月、当時のオバマ米大統領に「新型大国関係」を提案した。「広大な太平洋には米中両国を受け入れる十分な空間がある」と述べ、米中が国際秩序を形づくるG2を意識した構想を打ち出した。
ただ、オバマ氏はこれを事実上拒否した。中国が東シナ海や南シナ海への進出を強め、米連邦議会を中心に対中警戒が広がっていたためだ。その後、中国は新型大国関係を追求せず、新興国と協力して国際秩序をつくる「多国間主義」を掲げるようになった。今回の「建設的戦略的安定関係」も、この延長線上にある。
習氏は14日の会談で、新しい両国関係の概念について双方が合意したと明かした。一方、トランプ氏は現時点で明確な態度を示していない。
トランプ氏は15日公開のFOXニュースのインタビューで、「米中は非常に強力な2カ国であり、G2と呼んでいる。良好な関係が重要だ」と語った。韓国・釜山で2025年10月に習氏と会談した際にも、「G2会談」と呼んでいた。
米中首脳会談は年内に最大であと3回あるとみられる。中間選挙の1カ月ほど前には習氏の訪米も控える。選挙前に成果を求めるトランプ氏が、イランとの戦闘終結を探る協力や経済・貿易の拡大と引き換えに、台湾問題で取引する誘惑に駆られる余地は残る。
この記事が役に立ったら、ぜひシェアしてください。