スペースXが6月上場へ、マスク氏の統治権限は極めて強く
スペースX、6月IPOへ マスク氏は強い支配権維持
上場計画と株式構造
イーロン・マスク氏が率いる米スペースXが6月に新規株式公開(IPO)を実施する。来週にも上場計画を公表し、米ナスダック市場への上場を申請する目論見書は20日にも公開される見通しだ。時価総額は1兆7500億ドル(約276兆円)規模を目指し、早ければ6月12日の上場を視野に入れる。
同社は2002年にマスク氏が創業し、同氏が最高経営責任者(CEO)を務める。ロケット打ち上げや衛星通信を手がけてきたが、近年はマスク氏の複数企業を束ね、半導体やモデル開発にも参入する構えで、人工知能(AI)銘柄としての上場を狙う。
マスク氏の完全支配
ロイター通信によると、マスク氏はスペースX株を4割強保有し、議決権では8割を握る。一般向けの「A種」と、マスク氏ら関係者のみが保有できるスーパー議決権付きの「B種」を発行し、B種の議決権はA種の10倍とする。上場後もマスク氏の影響力を強く残す設計だ。
通常の取締役会手続きではなく、B種株主の投票だけでCEOの進退が決まる仕組みも採る。事実上、マスク氏の解任は不可能になる。創業者支配の例として知られるメタでさえ、マーク・ザッカーバーグCEOの議決権は6割程度にとどまるが、スペースXはそれを上回る支配権をマスク氏に与える。
テスラでの経験が背景
マスク氏が強い統治権限にこだわる背景には、電気自動車(EV)大手テスラでの経験がある。テスラは赤字が続くなかで10年に上場したが、別の創業者がいたこともあり、マスク氏の支配は相対的に弱かった。議決権は1割台にとどまり、同氏は経営安定には25%への引き上げが必要だと不満を示してきた。
企業統治を巡っては、業績連動の巨額報酬パッケージが米東部デラウェア州裁判所で一時否決されたことも影響した。24年の一審判決は、テスラ株主総会で承認済みだった総額550億ドルの株式報酬について、一部株主の訴えを認めた。原告が保有していたテスラ株は9株だった。
マスク氏はこれに反発し、テスラとスペースXの登記を米南部テキサス州に移した。スペースXでは、会社法を踏まえ、訴訟提起の権利を株式3%以上の保有者に限っている。
時価総額と市場への影響
マスク氏はスペースXにも業績連動型の報酬制度を持ち込み、ロイターによると、時価総額6.6兆ドルと宇宙データセンターの実現で6000万株、時価総額7.5兆ドルと火星への100万人移住の達成で2億株が付与されるという。
創業者主導の統治は、技術革新が速い業界では長期投資を進めやすいとの評価もある。一方で、スペースXは上場時点から1兆ドル超の時価総額が見込まれ、主要株価指数への早期組み入れが意識される。機関投資家は自動的に保有せざるを得なくなり、マスク氏主導のガバナンスリスクにさらされるとの懸念が出ている。
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