米長期金利が1年ぶり高水準、30年債は5.1%台へ
米30年債、5%台半ばが視野に
米超長期金利の上昇が続いている。15日には30年物国債利回りが5.1%台に乗せ、市場で意識されてきた節目に接近した。中東情勢の長期化によるインフレ再燃懸念に加え、米財政不安も金利上昇の背景にある。
10年債も1年ぶり高水準
長期金利の指標となる10年債利回りは15日、英LSEGによると一時4.599%まで上昇した。約1年ぶりの高水準となる。金利上昇は債券価格の下落につながるうえ、株式の相対的な割高感も意識される。ダウ工業株30種平均は前日比537ドル安の4万9526ドルとなり、米主要3指数はいずれも1%強下落した。
物価と財政が押し上げ要因
足元では、インフレ再燃への警戒が債券売りを誘っている。4月の主要物価指標が市場予想を上回る伸びとなったことに加え、15日までの米中首脳会談でも中東情勢の緩和に向けた進展はみられなかったとされる。米インタラクティブ・ブローカーズのホセ・トーレス上級エコノミストは、債券投資家が期待していた材料が乏しく、失望売りが広がったと指摘した。
ホルムズ海峡の事実上の封鎖が続くとの見方から、米原油先物指標WTIの期近物は1バレル100ドル台で高止まりしている。固定利払いの債券は物価上昇に弱く、インフレ下では受け取る利息の実質価値が目減りしやすい。
30年債5%ラインに注目
市場が注視するのは30年物国債だ。15日には5.13%に達する場面があり、2023年10月と2025年5月に付けた5.16〜5.17%が当面の上値として意識されている。これを抜ければ、2007年8月以来の高水準となる。
BNPパリバの米金利戦略責任者、グニート・ディングラ氏は、5%を抵抗線とみる見方に否定的だ。金利上昇の背景にはインフレ懸念だけでなく、米国の財政信認への不安もあるとみる。2023年の金利急騰を抑えたのは、米財務省が2023年11月〜2024年1月の国債発行計画で長期債入札の増額ペースを鈍らせる方針を示したことだったが、直近の2026年5〜7月計画では新たな指針は示されなかった。
財政赤字の拡大観測も根強い。イラン紛争で国防関連支出が膨らむ一方、連邦最高裁が「トランプ関税」の法的根拠を否定したことで、輸入企業への巨額還付が始まる見通しだ。JPモルガン・チェースは2026年の米財政赤字を1兆9800億ドルと見込んでいる。
米株の割高感、02年以来の水準
金利急騰は、4月以降に上昇基調を続けてきた米株にも重荷となり得る。株価の割高・割安を測る指標として使われるPERの逆数である益利回りは、投資額に対する利益の利回りを示す。
ファクトセットによると、S&P500の益利回りは12カ月先予想ベースで4.6%で、30年債利回りの5.1%を下回る。その差は0.5%と、2002年以来の大きさだ。当時はドットコム・バブル崩壊後の局面だった。
AI投資需要に支えられた半導体関連株の好調や、財政懸念から国債に資金を振り向けにくい面もあり、株高の一部は正当化されるとの見方はある。ただ、安全資産とされてきた米国債の利回りは、あらゆる金融資産の尺度として機能してきた。ここが揺らぐと、市場ではリスク回避姿勢が強まりやすい。
米バンク・オブ・アメリカのマイケル・ハートネット氏は、ドットコム・バブルのほか、1980年代の日本や2007年までの中国を例に挙げ、バブルやブームは利回りの急上昇で終わってきたと指摘した。30年債の5%ラインは守られるのが基本シナリオとしつつ、これを大きく上回れば「破局への扉が開く」と警戒感を示している。
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