米テック大手、AI新興企業への出資で収益と需要の好循環を形成
米アマゾン・ドット・コムやグーグルなどの巨大テック企業が、顧客でもある人工知能(AI)新興企業に出資し、クラウド売上と評価益の双方を取り込む構図を強めている。AI需要を押し上げる一方、資金の循環が過熱感を増している。
業績を押し上げる含み益
アマゾンの2025年1〜3月期決算では、営業外収益160億ドル(約2兆5000億円)の約8割をAI新興アンソロピックの評価益が占めた。アマゾンは25年までに同社へ80億ドルを出資し、提携している。
グーグル親会社のアルファベットも営業外収益377億ドルを計上し、未公開株の含み益が大半を占めたと説明した。25年までにアンソロピックへ30億ドルを投資したほか、イーロン・マスク氏率いるスペースXにも25年末時点で6%超を出資していた。
両社の1〜3月期純利益は前年同期比でともに約8割増えた。税引き前利益でみると、アルファベットは営業利益397億ドルに対し営業外収益が377億ドル、アマゾンは営業利益239億ドルに対して営業外収益が160億ドルだった。単純計算では、増益分の7割が本業以外によるものだった。
クラウド需要を支えるAI新興
大手テック企業は、有望な未上場企業への投資で稼ぐベンチャーキャピタルのような性格を強めつつある。アンソロピック、スペースX、オープンAIの3社はいずれも新規株式公開(IPO)を視野に入れている。
23年に40億ドル台だったアンソロピックの評価額は、近く9000億ドル規模に達する見通しだ。アマゾンとアルファベットは26年にオープンAIとアンソロピックへ最大計1150億ドルを追加出資する方針で、含み益をさらに膨らませる可能性がある。
アマゾンやグーグルのようにクラウド基盤を提供する企業にとって、AI新興は主要顧客でもある。米メディアのジ・インフォメーションによると、アマゾン、アルファベット、マイクロソフトのクラウド大手3社が3月末時点で抱える受注残計1兆5000億ドルの約半分は、オープンAIとアンソロピック向けだった。
未上場のAI企業が大型顧客としてクラウド需要を支え、出資先の評価益が大手の業績を押し上げる構図が定着しつつある。巨額の投資が大半はクラウド利用料として戻る循環が強まっており、AI需要を実態以上に膨らませるリスクもある。
投資拡大と資金調達の膨張
AI向け半導体で優位を持つエヌビディアも、GPUを購入する新興クラウド企業やAI企業への出資を拡大してきた。こうした資金循環は以前から指摘されており、需要の過熱や実態把握の難しさにつながるとの見方がある。
テック大手は債務も活用しながら、AIデータセンター投資を続けている。クラウド大手にメタを加えた米テック4社の2026年の設備投資は、前年比76%増の最大7250億ドルに達し、日本円では120兆円近い規模になる見通しだ。1〜3月期には、4社の投資キャッシュフローが本業の営業キャッシュフローを上回った。
資金調達では大型社債の発行が広がる。メタは25年10月と26年4月、アマゾンとアルファベットは25年11月に、それぞれ数百億ドル規模の社債を発行した。アルファベットは初の円建て社債発行も計画している。
メタが25年に始めた手法は特に複雑だ。米投資会社ブルー・アウル・キャピタルなどと組む共同出資会社を通じ、270億ドル規模のデータセンターを新設し、メタは賃料を払って利用する。負債を抑えながら計算資源を確保するこうした金融手法も広がっている。
2000年のITバブルでは、通信機器や光回線などへの投資が膨らみ、サプライヤーへの融資や出資を伴うベンダーファイナンスが過剰投資を後押しした。米巨大テック企業は足元の株高をけん引しているが、循環構造が一段と強まれば、AI投資は減速しにくくなる。市場の過熱を警戒する声がある中、先行投資が逆回転した場合のリスクも大きくなりそうだ。
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