トヨタ、26年3月期は減益でも高水準 中東情勢が焦点
業績は減益でも高水準
「大きな環境変化がある中でも3.8兆円の利益を上げることができた」。4月に社長に就いた近健太氏は8日の決算会見で、26年3月期をこう総括した。営業利益は3兆7662億円と前期比21%減だったが、米関税による1兆3800億円の下押しがありながら、過去3番目の高水準を確保した。
自動車業界では、トランプ米政権の関税政策に加え、購入時の税額控除廃止などを背景にEV戦略の見直しが進む。独フォルクスワーゲンは米国で一部EVの生産を終え、純利益が3割減った。ホンダもEV関連の資産や設備の除却損、減損、販売・開発中止に伴う損失を見込む。
バリューチェーンが支える収益力
トヨタの業績を下支えしているのが、補給部品や販売金融などのバリューチェーン事業だ。26年3月期の同事業の営業利益は2.1兆円と、連結営業利益の過半を占めた。世界で1.5億台に上るトヨタ車の保有顧客基盤を生かし、景気変動の影響を受けにくい収益構造を築きつつある。
世界販売は前期比2%増の1047万台で過去最高となった。競合がEVに集中する局面でも、トヨタはHV、EV、PHV、FCVをそろえる全方位戦略を維持した。電動車販売は504万台と初めて500万台を突破し、EV需要の鈍化局面ではHVが販売を伸ばした。
中東危機と供給網への備え
販売面でも地域分散を進めている。北米が全体の3割程度にとどまり、日本では雇用維持の観点から「生産300万台体制」を続ける。佐藤恒治副会長は「現地に適した商品を現地で開発して現地で生産する」と説明する。
さらにインドでは完成車の新工場を3カ所建設し、30年代に生産を100万台へ現在の3倍に引き上げる計画だ。3月には米南部ケンタッキー州と中西部インディアナ州の完成車工場に総額10億ドルを投じる方針も発表した。
一方で、足元では中東情勢の緊迫化が経営課題になりつつある。4月には日本国内工場で中東向けのランドクルーザーなどの生産を1万8000台減らし、5月から11月ごろにかけてはピックアップトラックなど海外生産を中東向け中心に3万8000台程度減らす。
調達面では、ナフサの供給不安が一段と意識されている。豊田合成の安田洋副社長は「5月末までは確保できているが、6月のどこかで懸念が出るという情報がある」と話す。どこかで目詰まりが起きれば、トヨタの生産全体への影響が広がりかねない。
近氏は損益分岐台数の改善も課題に挙げる。売上高と経費が均衡し、利益がゼロとなる販売台数で、これを下げれば採算は改善する。数値は公表していないが、部材価格の上昇などで悪化傾向にあるとみられ、生産改善の徹底が改めて求められている。
トヨタはグループ内で部品や資材の融通、代替品への置き換え、使用量の削減を進める。東崇徳経理本部長は中東情勢による減益影響について、「資材価格の高騰を回避できないか全社を通じて取り組んでいる」と述べた。
さらに、中国による日本向けレアアース輸出規制の強化をにらみ、アイシンやデンソーなども使用量の少ない製品の開発を進める。トヨタは日本の工場を中心に部品の種類を最大8割減らす生産効率化を欧米など世界18工場へ広げ、ネジや工具の統一も進める方針だ。
1970年代には2度の石油危機を受け、当時の豊田英二社長が「カイゼン」とトヨタ生産方式を押し進めた。今回の近社長にも、現地ニーズに応じた投資と、世界共通で稼ぐ力の改善を同時に進めるかじ取りが求められる。
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