ホルムズ海峡の供給リスクで原油上昇、米商業原油在庫の大幅増が上値を抑制

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アジア時間18日午前の原油先物は上昇した。米国とイランの合意を巡る不透明感が改めて強まり、供給途絶への警戒が続いている。CME Groupの公開遅延データによると、2026年9月限WTI原油先物は日本時間8月18日午前10時24分時点で1バレル=84.88ドルだった。ICE Futures Europeの公開遅延データでは、2026年10月限北海ブレント原油先物が同10時23分時点で91.09ドルだった。取引所、限月、観測時点が異なるため、両価格は直接比較できない。

市場では、ホルムズ海峡とバブ・エル・マンデブ海峡の船舶通航を巡る脅威が続く一方、一部の原油が貯蔵施設に到達したり、迂回輸送されたりしていることも確認されている。次の大きな値動きは、外交上の発言よりも、船舶通航の持続性、製油所の操業状況、在庫変化のペースに左右される可能性が高い。

足元の原油市場動向

地政学リスクで期近物の上乗せが続く

WTI原油先物と北海ブレント原油先物は、いずれもアジア時間の午前に上昇していた。NYMEXのWTI限月別先物カーブでは、2026年9月限が84.88ドルだったのに対し、2027年3月限は77.00ドルで、期近高・期先安のバックワーデーションとなっている。

この形状は、市場が早期に受け渡される原油を相対的に高く評価していることと整合する。ただし、先物カーブだけでは、戦争リスク、製油所需要、在庫政策がそれぞれどの程度影響しているかを切り分けることはできない。また、カーブは各限月の現在の価格を示すものであり、将来価格の予測ではない。

地政学情勢は引き続き不安定だ。AP通信は17日、イランとオマーンがホルムズ海峡の通航を巡る取り決めに向けて動く一方、米国とイランの交渉期間は延長されないまま期限を迎えつつあると報じた。商船の通航が正常化すれば、航路合意は原油価格の下押し要因となり得る。しかし、交渉を巡る威嚇的な動きや最近の船舶攻撃により、相応の上振れリスクプレミアムが残っている。

米商業原油在庫は1,742万2,000バレル増加

米エネルギー情報局(EIA)の最新統計は、原油相場の上昇を抑える材料となった。8月7日終了週の米商業原油在庫は、米戦略石油備蓄(SPR)を除くベースで前週比1,742万2,000バレル増の4億2,441万バレルとなった。オクラホマ州クッシングの在庫も161万1,000バレル増加した。

一方、同じ週のSPRは611万5,000バレル減の2億9,869万4,000バレルとなり、ガソリン在庫とジェット燃料在庫も減少した。商業原油在庫の積み上がりは、米国の石油供給網に短期的な余裕が生じたことを示すものの、戦略備蓄を含む、より広い供給余力の一部は引き続き消費されている。

次回のEIA週間統計では、今回の商業原油在庫の大幅増が一時的な物流要因だったのか、より持続的な在庫回復の始まりなのかが焦点となる。在庫増加だけで需要動向を断定することはできず、製油所の操業や輸出入などと併せて判断する必要がある。

OPECプラスは小幅な生産調整

OPECプラスの7カ国は8月2日、9月の生産量を日量18万8,000バレル調整することで合意し、過去の過剰生産を補填する方針も改めて確認した。

この政策変更の規模は、船舶輸送の混乱によって供給リスクにさらされる可能性のある量と比べれば小さい。それでも、通航状況が改善した後は、産油国の政策と合意順守が重要になることを示している。それまでは、名目上の生産目標よりも、実際の輸出量や仕向け地に到着する供給量の方が重要である。

原油市場の分析

ホルムズ海峡の通航正常化が相場の分岐点

各社の予測は、船舶通航がどう推移するかという条件に大きく左右されている。INGは7月時点で、ホルムズ海峡を通じた輸送にこれ以上の重大な混乱が生じないことを前提に、北海ブレント原油の平均価格を2026年7~9月期で80ドル、10~12月期で74ドルと予想した。一方、より深刻なシナリオでは、7~9月期中に100ドルを試す可能性があるとしている。

足元の北海ブレント原油価格がINGの基本シナリオにおける四半期平均を上回っていることは、治安悪化に伴うリスクプレミアムが、正常化を前提とした見通しを短期間で圧倒し得ることを示す。ただし、単一時点の先物価格と四半期平均予想は性質が異なる点に注意が必要だ。

S&P Global Market Intelligenceも7月の予測で、方向性は近いものの、INGほど弱気ではない見方を示した。米国とイランの暫定的な了解によって貿易フローが改善したことを受け、2026年の北海ブレント原油平均価格予想を103ドルから87ドルへ引き下げた一方、海峡が再び閉鎖されれば供給不足リスクが再燃すると警告した。

両社が重視しているのは、停戦を巡る見出しだけではなく、外交協議と実際の船舶通航である。基本シナリオが成立するには、商船通航が一時的ではなく持続的に回復し、原油供給が実際に仕向け地へ到達する必要がある。

供給の迂回と代替調達には地域差

Sparta Commoditiesは7月、ペルシャ湾岸産原油のカーゴが相次いだことで、アジア市場の供給は比較的潤沢だったと報告した。欧州とアジアの製油会社も、代替的な供給元からの調達に以前より対応しやすくなったとしている。

また、落札済みの米SPR原油約3,500万バレルが8月末までに民間の管理下へ移る見込みで、期近物に下押し圧力を及ぼす可能性があると指摘した。こうした供給余力は、船舶輸送を巡る深刻なリスクがあるにもかかわらず、原油価格が戦時下の最も極端な高値を下回っている理由の一つとなっている。

もっとも、代替供給には限界がある。輸送距離の長期化、戦争リスクに伴うコスト、製油所の制約により、地域間の供給代替には時間と費用がかかる。欧州では秋の定期修理期に、大西洋地域から機動的に供給できる原油をより多く取り込む可能性がある。一方、アジアの製油会社は湾岸航路の安定性により強く左右される。

INGが指摘した中国の原油購入の弱さも、相場の下押し要因である。反対に、中国の製油所需要が持続的に回復すれば、需給はより速いペースで引き締まる可能性がある。

通航・在庫データが次の方向を左右

短期的な上昇要因は、船舶通航の制約、停滞する外交交渉、ホルムズ海峡と紅海の双方へ混乱が広がる可能性である。WTIの強いバックワーデーションと90ドルを上回る北海ブレント原油は、市場が期近供給の確保を引き続き重視している状況と整合する。

下落要因としては、米商業原油在庫の大幅増、中東産原油の迂回輸送の継続、中国の購入低迷、実効性のある航路合意によって滞留していた供給が速やかに市場へ流入する可能性が挙げられる。

分析機関の見解が最も分かれているのは、ホルムズ海峡の重要性そのものではなく、商船通航と地域の生産がどの程度の速さで正常化するかである。今後は、二つの要衝における確認済みの船舶通航数、次回のEIA在庫統計、製油所の再稼働を示す情報、現物価格差が先物市場の強さを裏付けるかどうかが重要となる。なお、船舶通航数は原油カーゴ数や原油輸送量とは異なるため、実際の供給回復は積載量や到着量も含めて確認する必要がある。

原油市場の注目チャート

WTI限月別先物カーブはバックワーデーション

NYMEXのWTI限月別先物カーブは、2026年9月限から2027年3月限にかけて低下している。期近供給が遠月物より高く評価されていることを示すが、地政学リスク、製油所採算、在庫環境を合わせて反映したものであり、単一の要因だけを示すものではない。

2026年9月限から2027年3月限までのNYMEX WTI先物カーブ

商業原油在庫とSPRで対照的な動き

EIAの最新統計では、商業原油在庫が大幅に増加する一方、SPRと一部石油製品の在庫は減少した。この対照的な動きが、表面的には弱材料となる原油在庫の大幅増にもかかわらず、地政学リスクプレミアムがなお残る背景の一つである。

2026年8月7日終了週の米主要石油在庫の週間変化

まとめ

原油市場では、米商業原油在庫の大幅な積み上がりと代替輸送の進展が上値を抑える一方、ホルムズ海峡や紅海周辺の供給リスクが期近物を支えている。外交協議の進展だけでは通航正常化を確認できず、名目上の生産目標も実際の輸出量や到着量と同じではない。

船舶通航、製油所操業、在庫、現物価格差が同じ方向を示すまでは、原油価格は変動の大きい状態が続き、安全保障情勢に通常以上に敏感となる可能性が高い。

参考資料

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