米原油在庫の急増が相場の重荷、ホルムズ海峡の供給リスクは残る

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14日(金)のアジア時間に入った原油市場では、米国の原油在庫急増が相場を圧迫する一方、ホルムズ海峡を巡る供給不安が引き続き下支え要因となっている。公開されている取引所の遅延データによると、2026年8月14日午前10時08分(日本時間)時点で、WTI原油先物9月限は1バレル=81.34ドル、北海ブレント原油先物10月限は87.20ドルだった。

米国では原油輸入の増加と輸出の減少を背景に商業用原油在庫が大幅に積み上がり、石油製品供給量も前年同期を下回った。一方、米原油在庫は季節要因を考慮した過去5年平均を下回り、世界在庫は取り崩しが続いている。中東からの供給制約も残っており、海上輸送や石油製品供給の混乱に対する市場の脆弱性は解消していない。

足元の原油市場動向

遅延データでWTIは81ドル台、ブレントは87ドル台

指標 期近の中心限月 遅延最終値 観測時刻
WTI原油先物 2026年9月限 81.34ドル/バレル 8月14日10時08分(日本時間)
北海ブレント原油先物 2026年10月限 87.20ドル/バレル 8月14日10時08分(日本時間)

いずれもグローバルな電子先物取引の時間帯に観測された価格である。CMEのWTIデータは少なくとも10分、ICEの北海ブレントデータは少なくとも15分遅れている。リアルタイムで約定可能な気配値ではなく、参考価格として扱う必要がある。

米商業用原油在庫は1,740万バレル増加

米エネルギー情報局(EIA)によると、8月7日終了週の米商業用原油在庫は、米戦略石油備蓄(SPR)を除くベースで前週比1,740万バレル増の4億2,440万バレルとなった。

大幅な積み増しには貿易フローの変化が影響した。原油輸入は日量114万バレル増の733万9,000バレルとなる一方、輸出は日量62万7,000バレル減の305万8,000バレルに落ち込んだ。製油所の原油投入量は日量1,717万9,000バレルと高水準を維持し、製油所稼働率は96.2%に達した。

原油在庫の急増は目先の相場にとって明確な下押し要因だが、内訳は積み増し幅ほど一様に弱いわけではない。商業用原油在庫は季節要因を考慮した過去5年平均をなお約2%下回っている。ガソリン在庫は100万バレル減少し、過去5年平均を6%下回った。留出油在庫も小幅に減り、同平均を12%下回る水準にとどまった。

一方、直近4週間の石油製品供給量は日量平均2,072万バレルと前年同期比2.1%減少した。石油製品在庫の余裕が限られるなか、総需要を示す指標は弱含んでいる。

ホルムズ海峡の石油フローは大幅に縮小

EIAの8月見通しによると、ホルムズ海峡を通過する石油フローは2026年4~6月期に日量平均490万バレルとなり、2025年10~12月期の日量2,160万バレルから大幅に減少した。

EIAは世界在庫について、4~6月期に日量420万バレルのペースで取り崩されたと推計し、7~9月期にも日量380万バレル相当の在庫減少が続くと予測している。このため、米国の大幅な在庫増加が期近市場を圧迫しても、地政学的なリスクプレミアムを完全に解消する状況には至っていない。

OPECプラス参加国の増産でも在庫余力は限定的

OPECの8月月報は、2026年の世界石油需要の増加見通しを日量60万バレルに引き下げた。一方、「協力宣言」参加国の原油生産量は7月に日量142万バレル増加し、日量3,766万バレルとなった。

ただし、経済協力開発機構(OECD)の商業用在庫は6月に2,640万バレル減少し、27億2,900万バレルとなった。これは過去5年平均をなお6,650万バレル下回る。供給は増えているものの、在庫の余裕が十分な水準まで回復したとはいえない。

地域別需要と石油製品市場にはばらつき

OPECによると、日本の原油輸入は6月に日量210万バレルへ回復し、過去5年平均に近づいた。中国は日量710万バレル、インドは日量480万バレルを輸入した。

欧州ではディーゼルとガソリンの在庫が低いなか、ロッテルダムの精製マージンが上昇した。シンガポールの精製マージンも堅調を維持している。原油需給が緩んでも、製油所や海上輸送の制約が続けば、燃料価格が下支えされる可能性がある。

米国では、直近4週間のガソリン供給量が前年同期比0.5%減少した一方、留出油は1.9%、ジェット燃料は3.8%増加した。需要指標ごとに方向が異なるため、単一のデータを世界需要全体のシグナルとして扱うことはできない。

原油市場の分析

米在庫増が一時的か、広範な積み上がりかが焦点

足元の市場では、米国で確認された原油余剰と、世界全体で限られた在庫余力がせめぎ合っている。今回の米原油在庫増加は、輸入増と輸出減という貿易フローの急変による部分が大きい。これが一時的な変動なのか、より広範な在庫積み上がりの始まりなのかは、次回以降の在庫統計で確認する必要がある。

INGのウォーレン・パターソン氏とエワ・マンセイ氏は8月13日、米国の大幅な在庫増加は弱材料だと指摘する一方、ホルムズ海峡周辺で混乱が再燃すれば、湾岸地域からの供給回復が停滞する可能性があると警告した。短期的な価格動向は、海上輸送の改善と目に見える在庫の積み上がりのどちらが速く進むかに左右されるとの見方である。

原油と石油製品の価格調整には時間差

Capital Economicsのハマド・フセイン氏は8月13日、中東およびロシア産石油製品の供給制約により、ガソリンとディーゼルの値動きが原油から乖離していると指摘した。

同氏は、輸送フローが回復すれば価格は2027年から大きく低下すると見込んでおり、直ちに急落するとは予想していない。輸送ルートが再開しても、石油製品のサプライチェーンを再構築するまでには時間がかかるためである。

ブレント90ドル接近には供給混乱の再拡大が条件

S&P Global Market Intelligenceが7月17日に公表した見通しでは、ジョン・アントン氏、KC・チャン氏、マクスウェル・クラーク氏、トーマス・マッカーティン氏が、北海ブレント原油の年間平均価格を2026年に1バレル=87ドル、2027年に82ドルと予測した。

紛争が再び激化するか、ホルムズ海峡の混乱が深刻化すれば、夏場に90ドル近辺まで上昇する余地があるとみる一方、需要の軟化と不安定な停戦が上値を抑える要因になるとしている。

EIAの基本シナリオでは、北海ブレント原油は2026年7~9月期に85ドル近辺、10~12月期に約78ドル、石油フローと供給が正常化する2027年には69ドル前後になる。この見通しは正常化が進むことを前提としており、ホルムズ海峡の混乱が長期化すれば供給リスクプレミアムが維持される可能性がある。反対に、米原油在庫の増加が続き、石油製品需要が弱まり、産油国グループの生産量がさらに増えれば、下押し圧力が強まる。

原油市場の注目チャート

米商業用原油在庫とクッシング在庫

米商業用原油在庫とクッシング在庫、2026年7月3日~8月7日

EIAのデータでは、8月7日終了週の米商業用原油在庫が、7月を通じて推移していた比較的狭いレンジを大きく上回った。WTI原油先物の受け渡し拠点であるクッシングの在庫も増加したが、絶対量でみた増加規模ははるかに小さい。

この動きは目先の在庫増による上値圧力を強める一方、世界的な供給制約によって総在庫の取り崩しが続くかどうかという問題には結論を与えていない。

まとめ

原油市場では、米国の大幅な原油在庫増加が短期的な重荷となる一方、世界在庫の減少とホルムズ海峡の供給制約が相場を支えている。石油製品需要には弱さがみられるものの、ガソリンや留出油の在庫、欧州・アジアの精製マージンは、供給余力がなお限られていることを示す。

今後は、ホルムズ海峡を通過する実際の石油フロー、次回のEIA在庫統計、米国のガソリン・留出油在庫、欧州とアジアの精製マージン、中国・インド・日本の原油輸入動向が焦点となる。これらのデータが、今回の米在庫増加が一時的な貿易フローの変動なのか、より広範な在庫積み上がりの始まりなのかを判断する材料となる。

参考資料

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